研究実績の概要 |
当教室においては、これまで膀胱癌を代表とする尿路上皮癌に対する化学療法を施行する上での効果予測因子として薬学的バイオマーカーの意義に関する研究を行ってきている。ゲムシタビンの代謝関連物質としてはhENT1やRRM1や、シスプラチンの耐性獲得に関連すると報告されているERCC1をバイマーカー候補物質として、これらのタンパクの発現を免疫染色を中心とした解析を行い、すでに治療済みの症例において、これらのタンパクの発現と予後や治療効果(近接効果)との関連について検討を行ってきた。これらから得られた知見は1, hENT1はGEMに対する強力なpositive regulatory proteinである。2, RRM1はGEMに対するnegative regulatory proteinである(耐性と関与?)。3, ERCC1はCDDPに対するnegative regulatory proteinである。というものである。 これらの所見を踏まえて開始された多施設共同研究‘進行性・転移性膀胱癌症例に対する標準化学療法(GC療法、Gem+Carbo療法)の効果予測因子に関する前向き研究’は順調に進行中である。現在30症例が本研究に登録されており、本臨床研究に参加する同意を得た後に、化学療法開始前に診断や検査目的に得られた尿路上皮癌標本の一部を採取している。各種バイオマーカー候補物質の発現に関しては、免疫組織染色によるタンパク発現および定量的RT-PCR法を用いてmRNAレベルを全例で測定している。現在登録済症例に関するCRFを調査回収中である。問題となっているのは症例のリクルートが思わしくない点である。現在30症例が登録されているものの当初予測していたよりは症例登録ペースが遅いことである。最終的な登録症例の目標設定を50症例に修正して研究進行中である。
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