研究課題/領域番号 |
24592410
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
水野 隆一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60383824)
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研究分担者 |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00213885)
浅沼 宏 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70245570)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / mTOR阻害薬 |
研究概要 |
透析腎癌を含んだ腎細胞癌のデータベースを作成し、治療成績の観点から論文発表を行った。上述のデータベースに基づいて病理組織型によって選別し、透析腎癌20例、淡明細胞癌50例、乳頭状腎癌10例、嫌色素性腎癌5例を用いることとした。透析腎癌および通常腎癌組織のパラフィンブロックからミクロトームを用いて未染切片を作成し、未染切片を用いて、mTOR複合体2の構成要素であるRictor及びJNK阻害作用を持つMKP-1の発現を免疫染色を用いて検討するための条件設定を行った。実際に染色してみたところ、健常部と比較して腫瘍部ではMKP-1の発現が亢進していることが明らかとなった。同様にAktのSer473リン酸化に関しても免疫染色にて検討した。それぞれの染色結果をスコアリングし、各症例の病理組織学因子及び臨床因子とともに統計学的解析を行っている。主に病理組織型や核異型度との相関、あるいは生存分析などによって評価しているが、今回評価した因子が高発現している症例ほど予後が悪いという傾向が明らかとなった。また、実際にmTOR阻害薬が投与された症例を抽出してそれぞれの染色結果とmTOR阻害薬による治療効果を比較検討しているが、現在まだmTOR阻害薬投与中の症例が多く、最終的な統計学的考察は予後データが揃ってから行う予定である。 本年度の研究結果より、透析腎癌を含む腎細胞癌組織においてはmTOR複合体2経路の恒常的亢進が起こっていることが明らかとなり、治療成績と関与している可能性が示唆された。この結果に基づき細胞実験を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に組織を用いた研究を行った。通常は検体収集に多大な時間を要するが、本研究ではまず最初にデータベース作成を行ったため検体収集は比較的容易であった。そのため組織を用いた免疫染色は比較的順調に施行された。抗体の条件設定なども順調に進めることができた。 しかしながら治療成績との関連の検討においては、多くの症例が現在まだ治療中であるため最終解析できなかった。今後、時間とともに臨床成績が蓄積して解析可能になってくると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の組織を用いた研究から、透析腎癌においてもmTOR複合体2経路の恒常的亢進が起こっていることが明らかとなった。この結果を加味して今後は細胞実験によるシグナル経路の評価を行っていく。具体的には透析腎癌および通常腎癌細胞株にmTOR阻害薬とAkt阻害薬あるいはMKP-1阻害薬を同時に作用させ、MTTアッセイにて殺細胞効果を検討する。また、FACSにてアポトーシスの検出を行い、ウエスタンブロットや定量PCRアレイにて細胞内シグナルの変化を検討する。また、FACSを用いてアポトーシスが誘導されているかも検討する。当教室ではFACSによるアポトーシスの検出にはTUNEL法とPopidium iodideによる2重染色を行っている。この2つの方法を組み合わせることでアポトーシスによるDNAの断片化をより正確に検出可能となる。10cmディッシュにRCC細胞を培養し、抗腫瘍効果の実験に用いた通りの濃度・時間でmTOR阻害薬とAkt阻害薬あるいはMKP-1阻害薬を作用させる。浮遊している細胞も回収してFACSを行う。早期のアポトーシスの検出を追加する際には、アネキシンV染色を用いて細胞表面に出現したホスファチジルセリンの検出を同様にFACSにて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の細胞実験を進めていくにあたり、細胞培養の消耗品を購入する必要がある。具体的には細胞培養用培地、血清、抗生物質などである。細胞障害実験のためにmTOR、MKP-1、Akt各阻害薬を必要とする。FACSのための専用試薬、定量PCRのためのプライマープローブミックスおよびスーパーミックス等の購入が必要となる。また、透析学会総会に参加して透析腎癌に関する治療や基礎研究の現況について把握する予定である。
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