研究課題/領域番号 |
24592413
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
車 英俊 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80327329)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / アンドロゲン受容体 / MDV3100 / ホルモン治療 |
研究概要 |
①MDV3100抵抗性前立腺癌細胞株の生物学的特性の解析. MDV3100抵抗性前立腺癌細胞27種のMDV3100に対する反応性をCrystal violet assayによるIC50で評価した。平均のIC50は26.7 umol/Lで、親細胞のIC50(12.5 umol/L)より高値で、25細胞株(93%)はIC50上でMDV3100抵抗性を示した。アンドロゲン受容体の男性ホルモンに対する反応性を培養液中のPSA定量(ELISA)で評価したところ、アンドロゲン添加によりMDV3100抵抗性細胞は平均272%、親細胞は704%のPSA増加がみられ、MDV3100抵抗性細胞は親細胞より男性ホルモンに低反応となっていることがわかった。 ②MDV3100抵抗性前立腺癌細胞株の生物学的分類. 細胞内のタンパク質発現をウエスタンブロットで解析した。主にPSAとリン酸化Akt(pAkt)の発現を確認したところ、MDV3100抵抗性細胞はその発現パターンにより大きく3つのグループに分類されることがわかった(Group A: PSA (-), pAkt (+); Group B: PSA (+), pAkt (-); Group C: PSA (+), pAkt (+))。ウエスタンブロットによるタンパク発現解析では、アンドロゲン受容体は、Group A > B > C の順で高かったが、男性ホルモンに対する反応性を細胞培養液中に分泌されるPSA濃度をELISAで測定すると、Group B が最も高く、アンドロゲン受容体が強発現していたGroup A は男性ホルモンに対する反応性に乏しかった。 ③成果報告. 本研究の途中経過は、Molecular Cancer Therapy誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、①MDV3100抵抗性前立腺癌細胞株の生物学的特性の解析と、②MDV3100抵抗性前立腺癌細胞株の生物学的分類を計画していた。①は予定通り終了し、②は完了はしていないが、ほぼ予定通り進展している。また、論文発表は途中経過ではあるが予定よりも早く実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
MDV3100抵抗性前立腺癌細胞株を、PSAとpAktの発現パターンによって3グループに分類した。今後は、それぞれのグループから代表的な細胞株を抽出し、その生物学的特性を、遺伝子発現解析(定量的RT-PCR)、タンパク質発現解析(ウエスタンブロット)、アンドロゲン受容体の転写活性アッセイ(ルシフェラーゼアッセイ)、PI3K/Aktシグナル伝達活性、神経内分泌脱分化の有無、細胞内アンドロゲン生合成活性等で評価する。 また、二次元電気泳動法によるプロテオーム解析によって、それぞれの細胞の牛胎児血清培地、チャコール処理血清培地、合成アンドロゲン添加後、MDV3100治療後での網羅的タンパク質解析を実施する。これにより、タンパク質と遺伝子の発現様式およびリン酸化等 の修飾を明確にし、シグナル伝達を含んだMDV3100抵抗性前立腺癌の発生機序が深く検討できる。さらに、分泌タンパク質が量的変化を示した場合、そのタンパク質はMDV3100抵抗性の診断バイオマーカーになる可能性もあり、あるいは、遺伝子解析とともにプロテオーム解析で見出された分子は、そのMDV3100抵抗性の機序に基づき、治療に応用可能な標的分子となる可能性も秘めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子生物学的解析を主に実施するため、抗体、プライマー、バッファー、試薬、細胞培養用培地、液体窒素、プラスティック機器、ガラス機器を購入する予定である。また、学会発表に要する旅費、英文論文作成の際の英文校正費用、画像解析ソフトウエア、統計解析ソフトウエア、データ解析用コンピュータ、論文検索保存用のスキャナなどを購入予定である。
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