研究課題
CMVペプチドをがん抗原の代用として誘導したCMVペプチド特異的CTLを用いた昨年度の実験で、泌尿器系腫瘍で用いられるソラフェニブ、ドセタキセルに加えシスプラチン、5-FU、ゲムシタビン、イレッサを用いて、CTLに対する反応阻害効果、あるいは、CTLに対する直接傷害性、CTL増殖阻害効果について検討し、分子標的薬として分類されるイレッサ、ソラフェニブでは、CTLの反応阻害効果、増殖阻害効果、直接傷害性については認められなかった。しかし、ドセタキセル、ゲムシタビンでは、cmax濃度においては反応に対する阻害効果が認められ、また、cmax濃度、その1/10濃度でもCTLの増殖阻害効果が認められた。そこで、本年度では、シスプラチンと5FUについて、さらに、実際に投与された生体中での濃度で検査したところ、5FUでは増殖阻害は認められなかったが、シスプラチンについては、薬剤なしに比しておよそ40%の増殖阻害が認められた。これらのことから、ドセタキセル、ゲムシタビン、シスプラチンはCTLとの併用は困難である事が示された。そこで、さらに5FUとCTL治療の併用効果と、他の抗がん剤との併用による殺細胞効果との比較を行った。その結果、5-FUとCTLとの併用は、5FUとシスプラチンとの併用とほぼ同等の殺細胞効果が得られ、抗がん剤の副作用を軽減することが可能と考えられた。また、このときのCTLの殺細胞効果は、E/T ratioがおよそ0.1でも効果が認められ、密な腫瘍塊に対しては、効果の期待できることが示唆された。
3: やや遅れている
研究協力者であった大学院生が退学したため。腎がん患者で、採血協力がなかなか得られないため。マウスを用いて新規抗原(OVA)接種時における抗がん剤の影響を検討しているが、抗がん剤の投与をしていないコントロールマウスにおいてもOVAテトラマー陽性CTLの検出が、困難であったため。
・CTLを用いた免疫治療における抗がん剤の影響については、現在安定に誘導可能なCMVペプチドに対するCTLを用いて引き続き検討する。・新規抗原接種時における抗がん剤の影響を検討しているが、抗がん剤の投与をしていないコントロールマウスにおいてもテトラマー陽性CTLの検出が、困難であったので、抗体価での評価に切り替えて評価を実施する。・患者リンパ球からのCTL誘導については、特に腎臓がんを対象として考えていたが、なかなか検者登録数が得られないため、膀胱がん、前立腺がん等にも対象患者を拡大することとする。
研究の遅れによる。新たな研究協力者が得られたため,使用物品の増加が見込まれる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Anticancer Res.
巻: 34 ページ: 89-97