研究概要 |
近年、多くの腫瘍抗原がcytotoxic T lymphocytes(CTLs)を誘導することが確認されており、その腫瘍抗原のペプチドを利用した癌ペプチドワクチン療法の有効性が報告されている。現在、癌ワクチン療法の適応はHLA-A2,-A24陽性患者のみで臨床に応用できるHLA-A3 supertype alleles拘束性の癌ペプチドは無いのが現状である。この状況を打開するためにHLA-A3 super type拘束性のペプチド同定を目的とした。本研究に対し同意を得た前立腺癌患者より末梢血30ccを採取し、Ficoll-Conray液による末梢血単核球細胞を遠心分離とフローサイトメトリーにて同定したHLA-A3 supertype allelesのうちHLA‐A11,-A31,-A33陽性のものを対象とした。3種類の前立腺癌関連抗原(PTH-rP,EGFR,EZH2)のクラスI拘束性ペプチドを1抗原3~5種類合成した。次にHLA-A1101,-A3101,-A3303強発現LNCaPトランスフェクタントを樹立した。HLAタイピング及びPBMCの採取を施行しHLA-A3 supertype alleles陽性例であった6例に対し各ペプチドにてPBMCを刺激しC1R-A11,-A31,-A33をtargetとしCTLassayを施行したところEZHペプチドの1種に対し6例中4例にてペプチド特異的CTLの誘導を確認した。次にCTLの誘導を認めたEZHペプチドにて刺激されたCD8+CTLsにて6時間51Cr release assayでLNCaP,LNCaP-A11,-A31,-A33に対してのcytotoxicityを確認した。現時点でHLA-A11陽性患者にて2例、HLA-A31陽性患者にて1例にてHLA-A3拘束性ペプチド特異的cytotoxicityを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類の前立腺癌関連抗原(PTH-rP,EGFR,EZH2)のクラスI拘束性ペプチドにてPBMCを刺激しC1R-A11,-A31,-A33をtargetとしCTLassayを施行したところ最もペプチド特異的CTLの誘導を確認できたEZHペプチドの1種に対し同ペプチドにてpulseされたCD8+CTLsにて6時間51Cr release assayを施行。現時点にてHLA-A11陽性患者にて2例、HLA-A31陽性患者にて1例にてHLA-A3拘束性ペプチド特異的cytotoxicityを確認できた。またペプチド刺激されたCTLsの特異性をcold inhibition assayにて確認した。具体的には51Cr-labeled target cells(2×103/well)を2×104effector cellと2×104cold target cellと共に培養しcold target cellとしてHIVまたはペプチドを刺激したC1R-A11,C1R-A31,C1R-A33を使用した。現時点でHLA-A11陽性患者2例、HLA-A31陽性患者3例にてEZHペプチドを刺激したcold target cellにより51Cr-labeled target cellへのcytotoxicityが抑制されペプチド刺激されたCTLsの特異性を確認した。
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