研究課題/領域番号 |
24592419
|
研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
曽我 倫久人 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, 研究員 (60332714)
|
研究分担者 |
成田 正明 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80302404)
杉村 芳樹 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90179151)
石井 健一朗 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90397513)
|
キーワード | manserin / 神経内分泌様分化誘導 / 前立腺がん |
研究概要 |
平成25年度は、前立腺がんにおけるManserinの作用を明らかにするために、in vitroの実験を引き続き行った。前立腺がんの細胞株として、LNCaP (アンドロゲン感受性株、manserin高発現株)、F10 (LNCaPから分離したアンドロゲン低感受性株:manserin低発現株)、を使用した。昨年度の実験系において、manserinはLNCaPの細胞増殖を抑制し、F10の細胞増殖が促進した。また、LNCaPにおいて培養液中のPSA量 (prostate specific antigen)及び、細胞内PSAの発現量を低下させることを確認した。神経内分泌様分化誘導として、manserinが、LNCaPにおいてNSE (neuron specific enolase)及び、VEGF(vascular endothelial growth factor)の発現量を増加させた。それらのmanserinの作用に関わる細胞内シグナルを解明するために、MAP kinaseのErk signal及び、PI3kinase AKT signalの増減を確認した。しかし、LNCaP, F10細胞において、Phospho-Erk及び Phospho-Aktの活性は、manserin付加により変動は無かった。以上のことより、manserinは、MAP kinaseのErk signal及び、PI3kinase AKT signal以外のsignalを利用して、細胞に作用していることが類推された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺がんにおけるmanserinの作用として、manserin高発現株においては、神経内分泌様分化誘導、manserin低発現株においては、細胞増殖を誘発している可能性が示唆された。 しかし、MAP kinaseのErk signal及び、PI3kinase AKTは、その作用を司る細胞内シグナルとしての候補としては否定された。細胞内シグナルの同定が必要とされる。しかし、manserinの明確な作用の発現が確認できていることより、進行状況はおおむね良好と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後明らかにする、manserinに関するテーマの具体的な内容の一つ目としては、manserin高発現株における、神経内分泌様分化誘導に関わる細胞内シグナルの同定である。現在の所、Akt-PI-3kinase, MAP kinase(Erk)のシグナルは関与していないことが確認されているので、他の細胞内シグナルの変化を検証する。 具体的な内容としての二つ目は、manserinによる走化性に関わる作用の検証である。 manserinが、走化性、浸潤能を誘導する可能性があると考えている。走化性を確認するために、migration assayを、浸潤能を確認するために、invasion assayを行う。 manserinが走化性、浸潤能を誘導することが証明されれば、細胞骨格の変動、細胞間接着因子の変動、細胞外マトリックとの接着、MMPを中心とした線溶系誘導の変化を確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
In vitroの実験系にて、manserinに関わる細胞内シグナルの検証を行っていたが、当初の仮説である、Akt-PI3 kinaseや、MAP(Erk)kinaseが関与しないことが明らかになり、 研究が停滞した。上記のため、計画との使用額と差が生じた。 引き続きin vitroの研究を推進するために研究費を使用する予定である。 in vitroの研究を推進するにあたり、細胞培養に伴う消耗品(シャーレ、培養液、血清など)、生成されたManserin、western blotting、migration assay, invasion assay、細胞骨格の染色などを中心とした評価器具、抗体、細胞内シグナルの拮抗薬を準備する必要がある。それら消耗品を準備するために、本年度の科研費を使用する。
|