研究課題/領域番号 |
24592420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野宮 明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30372379)
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研究分担者 |
新美 文彩 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00376451)
井川 靖彦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40159588)
本間 之夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40165626)
西松 寛明 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60251295)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 慢性炎症 / 間質性膀胱炎 / 動物モデル / 膀胱 |
研究概要 |
臨床検体を用いた研究として、当科で蓄積した臨床症例の臨床データおよび尿・組織などの検体を用いた研究を行ってきた。尿中の虚血関連物質・伝達物質の検討としては、患者の尿中の伝達物質として昨今間質性膀胱炎の病勢マーカーの一つとして注目されているまNGFの濃度を測定し、下部尿路症状の種類やその重症度、および治療方法や治療後経過との相関を検討した。現時点では、症状との相関を認めていないが、NGFの測定系が不安定なため、現在、測定条件の調整を行いながら検討を重ねている。 膀胱組織を用いた分子生物学的・免疫組織学的検討においては膀胱水圧拡張術に際して採取した膀胱組織を用いて、分子生物学的な評価を行い、各種虚血関連物質の合成や放出あるいはその受容体に関与すると考えられる分子のRNA量を、各プライマーを用いて定量的PCR法にて測定した。結果、潰瘍型の間質性膀胱炎でTRPM2の有意な発現増加を認め、潰瘍型間質性膀胱炎におけるTRPM2をはじめとしたTRPチャンネルの有意な発現上昇を認めた。 動物モデルを用いた研究としては、従来の膀胱粘膜障害モデルであるprotamine sulfate膀胱内注入モデルをもとにして、さらにその膀胱動脈の焼灼を加える事によって、膀胱組織における慢性的な虚血、更には炎症の誘導に成功しており、現在、論文投稿中である。平成24年度はにこのモデルを確立し、現在、論文執筆と平行してヒトICとの相似性を膀胱組織、各種蛋白発現、RNA発現、尿中マーカーをそれぞれ網羅的に検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尿中マーカーの測定系の確立に時間を要したこと、また猛暑の影響で夏季にモデル動物の生存率が低下したため、当初予定した計画に見合うだけの動物の作成が追いつかなかったことがあげられる。 尿中マーカーの測定系は現時点では確立されつつあり、また、夏季は生存率が低くなることを見越し、夏季を避けてモデル動物を作成することで平成25年度は研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に測定系の確立に時間を要した尿中マーカーの測定を進め、さらに、動物モデルを致死率の低い時期に量産し、膀胱摘出サンプルを用いてmRNAの測定を進める。その上で、平成25年度に予定している、膀胱組織中の蛋白量の測定、膀胱組織を用いた免疫染色の実施・検討、モデルを用いて組織学的検討、機能生理学的な検討を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床検体を用いた研究としては、平成24年度に行ったRNAの測定で有意な発現の増加を認めるものについて、Western blot法にて蛋白量の定量を行い、更にクライオスタットを用いて標本の薄切切片を作成しスライドグラス上に固定して、各種モノクロナール抗体を用いて免疫組織染色を行い、蛋白の局在を確認する。使用する抗体としては、HIF1α、HSP70、HSP90、VE cadherin、VEGF、TUNEL、βGalactosidaseなどを予定している。 動物実験としては、平成24年度に確立したモデルを用いて各種機能実験および、組織学的な評価などを行う。具体的には、(1)排尿状態の検討・尿中マーカーの測定を行う。これは、代謝ケージで飼育し、1回排尿量、1日排尿回数を3日間連続にて測定する。さらに採取した尿を用い、尿中電解質(Na, K, Cl)、尿素窒素、クレアチニンなどを測定する。また、(2)膀胱内圧測定をおこなう。こちらは、ウレタン麻酔下に下腹部正中切開を行い、膀胱頂部から細径カテーテルを留置し、生理食塩水を一定速度で膀胱内に持続注入しながら膀胱内圧と排尿量を同時に測定する膀胱内圧測定検査を行う。排尿間隔、1回排尿量、残尿量、膀胱容量、排尿時最大膀胱内圧、排尿閾値圧、premicturition-contractionの頻度や圧および膀胱コンプライアンスを測定する。そして(3)膀胱組織を用いた分子生物学的・免疫組織学的検討を行う。すなわちHIF1α、HSP70, VEcadherin, VEGF, endogrinなどの虚血関連因子の解析をwestern blotting法、qT-PCR法により解析し、その中で強い発現を認める虚血マーカー・関連因子について免疫組織染色法でその局在を明らかにしヒトICとの共通性を検討し、更には治療ターゲットとしての可能性を模索する。
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