研究課題/領域番号 |
24592428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
荒木 勇雄 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (50252424)
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研究分担者 |
水流 輝彦 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90625675)
影山 進 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50378452)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膀胱 / 排尿 / プロスタグランジン / 知覚 / 求心路 |
研究概要 |
本研究の目的は,過活動膀胱発症におけるプロスタグランジンEP4受容体の役割とその作用メカニズムを解明することである。本研究の成果によって,膀胱知覚神経路におけるEP4受容体の役割が解明され,新たな過活動膀胱治療薬の開発に繋がるものと期待される。 本年度の研究によって,1)正常膀胱にはほとんど発現していないEP4受容体(遺伝子・蛋白)が,尿道部分閉塞を伴う膀胱においては膀胱上皮および膀胱平滑筋に明瞭に発現することが証明された(ラット)(J Urol 186: 2463-2469, 2011)。2)尿道部分閉塞を有するラットにおけるin vivo膀胱内圧測定において,EP4受容体刺激薬を膀胱内に還流することによって膀胱容量が増大することを証明した。このEP4アゴニストの効果は,正常ラットでは認められなかった(European Association of Urology 27th Annual Congress, Paris, France, 2012)3)高カリウム溶液による膀胱切片の収縮がEP4受容体刺激薬によって弛緩することをin vitro等尺性張力実験によって証明した(42nd Annual Meeting of International Continence Society, Beijing, China, 2012)。 以上の実験結果は,尿道閉塞に伴う過活動膀胱の発症にEP4受容体が関与している可能性を示唆しており,EP4は過活動膀胱の発症に対して反作用的(拮抗作用)に働く可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画であった1)遺伝子・蛋白発現実験2)in vivo 機能実験(持続膀胱内圧測定)3)in vitro 機能実験(膀胱切片における等尺性張力実験)をほぼ終了し,膀胱におけるEP4受容体の役割について新しい知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.正常および部分尿道閉塞ラットにおける知覚神経でのEP受容体の発現。 1)膀胱を支配している後根神経節細胞:L6-S1後根神経節におけるEP4の発現と下部尿路閉塞による発現変化を検討する(real-time RT-PCR,免疫組織化学,ウエスタン・ブロッテイング)。また,色素(DiI)をラット膀胱壁に注入して膀胱を支配している後根神経節の知覚神経細胞を逆行性に標識する。L6-S1後根神経節を摘出して,抗EP4抗体にて二重免疫蛍光染色する。このことにより、逆行性に同定された膀胱を支配する後根神経節細胞におけるEP4の発現が確認できる。 2)膀胱上皮直下の知覚神経終末:知覚神経終末における発現を検討するため、抗EP4抗体および抗CGRP抗体など知覚神経(C線維)に特異的な抗体を使用して膀胱粘膜層の二重免疫蛍光染色を行い、膀胱上皮直下の知覚神経終末におけるEP4蛋白の存在を確認する(免疫組織化学,confocal laser microscope)。 2.正常および部分尿道閉塞ラットの膀胱上皮における伸展刺激によるATP放出に対するEP4受容体の役割。 1)オーガンバスを用いて、膀胱切片を伸展した際のATP放出量をLuciferin-luciferase assay kitを用いて測定する。膀胱切片を伸展した場合に放出されるATPのほとんどは膀胱上皮由来であることが我々の実験からも証明されている(Urology 69:590-595, 2007)。オーガンバス内に灌流したEP4アゴニスト(ONO-AE1-329)によるATP放出量の変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験用消耗品に関しては、いずれも昨年度使用状況から実験計画として必要なものを選択する。実験動物(ラット)およびPCR関連経費・試薬,確認用電気泳動試薬,ウエスタンブロッティング用試薬,免疫染色用試薬(抗体など),膀胱支配神経標識用蛍光色素,生理実験用試薬および関連する実験器具類などである。 滋賀医科大学共同利用施設(実習実験支援センター,動物生命科学研究センター)を十分に活用する。蛍光CCDイメージアナライザー,定量画像解析装置,共焦点レーザー顕微鏡などは共同利用施設内の装置を使用しレンタル料を支払う。また,in vivo/in vitro動物実験(オーガンバスなど)用に共同実験施設内の1室を年間を通じて借用する予定である。 研究成果を広く発信するためには国内外の学会での発表は欠かせず、海外では米国泌尿器科学会(格安航空券往復10万円+宿泊費),国際禁制学会(欧州・格安航空券往復25万+宿泊費),欧州泌尿器科学会(格安航空券往復25万+宿泊費)を中心として複数回を予定している。また本研究成果は、複数編の学術論文(国内外)として発表される内容を有している(投稿料7万×2)。
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