研究課題/領域番号 |
24592431
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
齊藤 源顕 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (60273893)
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研究分担者 |
木下 ゆか子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50032214)
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キーワード | 慢性虚血 / 下部尿路症 / 前立腺 |
研究概要 |
ヒトの前立腺肥大の原因は、加齢と性ホルモンが影響していること以外はっきりとわかっていない。自然発症高血圧ラット(spontaneously hypertensive rat; SHR)では前立腺の血流量が低下しており、一定の週齢を超えると前立腺が肥大することが知られている。本研究ではSHRにおいて、性ホルモン及び、前立腺血流低下により発生した酸化ストレスが前立腺を肥大する分子機構が存在するか検討した。12週齢雄性SHRに薬物投与群として血管拡張薬であるATP感受性カリウムチャネル開口薬ニコランジル3, 10 mg/kg をそれぞれ6週間、1日1回経口投与した。対照としてvehicleを投与したSHRとWKYラット (コントロール群) の計4群で実験を行った。血圧測定及び前立腺の血流量を測定した後、前立腺を摘出した。そして、酸化傷害のマーカーであるMDA、低酸素応答性転写因子HIF-1α、性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)及び線維化や細胞増殖のマーカーであるbFGF、TGF-β1をELISA法で測定した。加えてHE染色による組織学的検討を行った。SHR前立腺では血流量低下、MDA、HIF-1αの上昇、bFGF、TGF-β1の発現の有意な増加がコントロール群に比べてみられた。しかし、SHR群とコントロール群の間にDHT量の有意な差は見られなかった。さらにSHRの背側前立腺はコントロールと比べて変化がみられないが、腹側前立腺の増殖が観察された。一方、ニコランジルを投与した群ではそれらの反応は見られず、腹側前立腺の肥大を抑制した。SHRでは性ホルモン量に依存せず前立腺肥大が起きていた。前立腺の血流量低下及び酸化ストレスが前立腺の細胞増殖に関与することが示唆された。本研究結果は酸化ストレスシグナルによる性ホルモン非依存性の前立腺肥大という新しい分子機構を提唱する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に研究目標は全体の半分ほど達成していたと考える。本年度は、下部尿路症を考えたときに避けて通れない前立腺の過形成の新たなメカニズムを提唱出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果を基に更に、骨盤内血流と過活動膀胱および前立腺過形成もメカニズム、特に虚血による活性酸素と炎症を焦点に研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
出来るだけ交付金額に近づくように予算を使用したが、少額(5596円)の端数が出たため。 本年度の予算執行額を、従来の計画通り適正に使用する。
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