研究の初年度である平成24年は、まず研究実施計画にそって、S-Dラットを使用し動脈硬化モデルの作成から開始した。これは以前に当科で開発した世界初のモデルで有り(Neurourol Urodyn 2011)、機能的に過活動膀胱を呈することを我々は報告している。モデルの再現性を確認するため10匹のラットを使用し、両側総腸骨動脈からバルーンカテーテルを挿入して内膜損傷を引き起こし、高コレステロール食を摂取させた。手術後8週間で膀胱を摘出し、H-E染色にて膀胱の組織学的検討を行ったところ、膀胱壁内の動脈と総腸骨、内腸骨動脈に内膜中膜の肥厚が認められた。また、コントロール群、sham群では、動脈硬化のみられないことも確認された。覚醒下での膀胱内圧測定では、動脈硬化ラットモデルが排尿間隔が短く頻尿となっていることも確認できた。 モデルの再現性の確認後、オルガンバススタディーによる各種薬剤への反応性の検討を行った。具体的には、膀胱の弛緩作用を持つRhoーkinase阻害剤(Y27632)を使用し、その反応性をモデル群、コントロール群、sham群で比較した。途中経過ではあるが、動脈硬化モデルでは、膀胱平滑筋条片の収縮の持続反応が増強していた。また、平滑筋の収縮の持続に関与するrho-kinaseの阻害剤による弛緩反応は、コントロール群やsham群と動脈硬化群に大きな差は無いような傾向であった。
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