平成24年度までの研究成果:まず、先行研究(Nomiya et al. Neurourol Urodyn 2011)に準じて、動脈硬化ラットモデルの作成を行った。作成後24週目に、代謝ゲージによる排尿記録、膀胱内圧測定、膀胱血流測定を行った所、モデルの再現性が確認できた。さらに、AI群では膀胱壁の血流が有意に低下していることが確認された。組織学的検討でも、AI群で総腸骨動脈、内腸骨動脈、膀胱壁内動脈で内弾性板の有意な肥厚が観察された。 平成25年度の研究成果:AI群とcontrol群の平滑筋条片を用いてオルガンバススタディーを行い各種薬剤、電気刺激に対する反応性の検討を行った。80mM KCL、1mM ATPに対する収縮反応は、AI群で有意に低下していた。Cchによる濃度反応曲線では、10-7M~10-3Mの濃度で、AI群は収縮力が有意に低下していた。さらに、経壁電気刺激では、AI群は収縮力が有意に低下していることが明らかとなった。次に、Cch 10-6Mによる膀胱平滑筋の収縮張力の経時的な検討では、AI群では一過性収縮反応は低下しているが、持続性収縮反応は保たれていていた。そこで、持続収縮に関与するRhoA/Rho-kinase系の検討を行った。オルガンバススタディーでは、control群に比べAI群では、Rho-kinase阻害剤(Y-27632)に対する弛緩反応が有意に増強していた。ウエスタンブロットでは、AI群でRhoA、ROKβの発現が有意に増強していた。 これらの結果より、長期間の慢性膀胱虚血では、排尿筋過活動を呈するが、全体としての収縮力は低下すること、持続性の収縮張力は保たれていることが示された。この原因として、RhoA/Rho-kinase系の発現増強が関与しており、虚血による膀胱収縮力低下に対する、代償作用の可能性も考えられた。
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