研究課題
基盤研究(C)
哺乳類低温ショック蛋白質CirpとRbm3の精子形成における機能とその分子機序を明らかにし、低温ショック蛋白質の臨床的意義を明らかにすることを目的として研究を行った。1. cirp遺伝子ノックアウトマウスでは、形態的な異常や妊孕性の変化を認めなかったが、未分化精原細胞の数が有意に低下していた。また、Busulfan投与後の未分化精原細胞数の回復が遅延した。2.マウスspermatogonia細胞株及び線維芽細胞株にCirpを過剰発現、あるいは発現抑制した結果、Cirpの細胞増殖促進活性を見いだした。Cirpが結合する蛋白質を酵母2ハイブリッド法で同定し、Cirpの細胞増殖促進活性はCirpがDyrk1b蛋白質に結合してそのキナーゼ活性を抑制し、基質であるp27蛋白質の不安定化及びcyclin D1の安定化を起こして細胞周期を進行させるためであることを示した。3. CLIP-seq法によりCirpに結合するRNAとして、Per3、Rora1、Sirt1、Hspa4l他多くの遺伝子を同定した。特に主要な体内時計遺伝子Clockは、Cirpにより発現レベルの概日リズムが増強し安定化された。4. 一過性トランスフェクション法を用いて、cirpゲノムの5’領域に存在する5’-TCCCCGCC-3’配列が軽度低温応答エレメントであると同定した。この配列に結合する転写因子はSp1であり、軽度低温によるCirpの発現誘導にはSp1が必要であった。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の研究実施計画のうち、低温ショック蛋白質の細胞増殖に対する影響の解析については、マウスspermatogonia細胞株および線維芽細胞株にCirpを過剰発現させ、あるいはRNAiでCirp発現を抑制し、Cirpが結合する蛋白質を同定して、細胞増殖促進の分子機序をあきらかにできた。さらに計画以上に、Cirp発現誘導機序の解明およびCirp結合RNAの同定ができた。また、Rbm3ノックアウトマウスを順調に繁殖させることができ、産子数等の妊孕性への影響の解析もある程度進んだが、Rbm3ノックアウトマウスにストレスを負荷した後の精巣回復過程の解析や細胞でのRbm3機能解析等がやや遅れた。
Rbm3ノックアウトマウスの生殖能や精子形成細胞の解析を進め、見いだされる変化の分子機序を明らかにする。さらに当初計画通りにRbm3とCirpのダブルノックアウトマウスの作出と解析を行うとともにヒト精巣腫瘍細胞株でCirpおよびRbm3蛋白質の発現を解析し、臨床的意義を検討する。
マウスの飼育、細胞培養、細胞分子生物学的解析を行うために、消耗品費と一部実験補助への謝金が必要。また情報収集及び研究発表のために旅費が必要。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 432 ページ: 22-27
10.1016/j.bbrc.2013.01.093
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 109 ページ: 10885-10890
10.1073/pnas.1121524109
Science
巻: 338 ページ: 379-383
10.1126/science.1217726
BMC Biotechnol
巻: Oct 10;12:72 ページ: -
10.1186/1472-6750-12-72
Sci Rep
巻: 2:642 ページ: -
10.1038/srep00642