研究課題
哺乳類の低温ショック蛋白質CirpとRbm3の精子形成における機能とその作用機序を明らかにし、軽度低温環境の生物学的・臨床的意義を明らかにすることを目的として研究を行い、以下の結果を得た。1.Cirp遺伝子ノックアウト(KO)マウスでは未分化精原細胞が減少し、DNA損傷からの回復も遅れた。しかし、妊孕性の低下は認められなかった。CirpとRbm3とのダブルKOマウスにおいても同様であった。CirpとRbm3は細胞増殖を促進する場合も抑制する場合もある。マウス皮膚線維芽細胞や上皮細胞では増殖に影響せず、細胞運動能を亢進した。この作用のシグナル伝達経路を明らかにした。また、KOマウスはともに実験的な皮膚創傷の治癒が遅れた。2. Cirpは細胞外に存在すると、炎症性サイトカインの分泌を促進して炎症を増悪させる。マウスに実験的に肝がんや大腸がんを誘発すると、Cirp-KOマウスでは、炎症や発がんが部分的に抑制された。3. ヒト精巣腫瘍症例を免疫組織染色し、がん蛋白質ガンキリンが正常精母細胞だけではなく一部の腫瘍で高発現していることを見いだした。さらに低温ショック蛋白質について解析中である。低温ショック蛋白質が、細胞の保護、増殖促進・抑制といった有益な作用だけではなく、炎症や発がんの促進という不都合な作用も示すことが明らかになった。軽度の低温環境は、精巣だけではなく皮膚等の臓器にも関係し、その生物学は臨床的にも重要であることが示唆された。
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