研究課題
前年度までに作成したCOX-2誘導モデルマウスを用いて、造精機能障害の原因について解析を進めた。実験的停留精巣の患側において、造精機能の低下とともにCOX-2の発現が経時的に増強していた。RT-PCRにより患側でのCOX-2mRNAの発現は健側の約4倍に増加していることが確認された。COX-2インヒビター投与群において、造精機能を表すジョンセンスコアは更に低下が見られ、アポトーシス陽性細胞の増加が認められた。したがって停留精巣においてCOX-2が強く誘導されるが、インヒビター投与によって造精機能障害が増強される結果となった。このことから、誘導されたCOX-2はアポトーシスを抑制することで精細胞を傷害から保護する役割があることが推定された。アポトーシス関連遺伝子の発現について、精巣組織から抽出したmRNAを用いてRT-PCRを施行した。PPARγ、NFκB、p53、Baxといったアポトーシスを制御するとされる転写因子群の発現を解析したが一定の傾向は認められなかった。COX-2はプロスタグランジンの生成を介してアポトーシスの制御に関わっていると考えられているが、現時点ではどのような転写因子群が関与しているか定かではない。COX-2はStAR遺伝子の発現を介して、Leidig細胞でのテストステロン産生の制御に関わっているとされる。今回の研究ではインヒビター投与群でテストステロンの産生低下も認められているが、他の性ホルモンの測定結果からは有意な結果は得られなかった。