研究課題/領域番号 |
24592450
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
石橋 道男 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40107032)
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研究分担者 |
東原 英二 杏林大学, 医学部, 教授 (00092312)
長尾 静子 藤田保健衛生大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20183527)
千原 良友 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40405395)
小島 直人 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (90420413)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多発性嚢胞腎 |
研究概要 |
多発性嚢胞腎の動物モデルPCKラットの嚢胞化進展過程においてEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT)が関与している可能性が示唆された。本研究の目的として、その解析アプローチとして、EMTを強く阻害する新規ベンゾイソフラノン誘導体低分子化合物(小島)のうちNK0070を投与し嚢胞化進展を抑制する効果と、in vitroにおける細胞マトリックス接着応答に関わる蛋白分子についてエピジェネテイックス修飾を検討した。平成24年度の研究成果として以下の結果を得た。第一点は、NK0070は明らかにPCKラットの多発性嚢胞腎の嚢胞化の進展を病理形態的に抑制した。すなわち、髄質に発生する嚢胞サイズの縮小傾向、乳頭起始部と皮質間を走る髄質嚢胞間の索組織は太く結果として皮質部の小嚢胞の形成が抑えられた(長尾)。第二点は、細胞マトリックス接着の応答蛋白分子のDNAメチル化によるエピジェネテイクス修飾を検討した。ラット腎尿細管細胞株NRK52Eを、in vitro においてhuman recombinant TGF-β1(hrTGFβ1)で刺激培養すると5日前後で形態的に線維芽細胞様に変化していく。細胞を採取しDNAを抽出しバイサルファイト処理しpyrosequencerにてDNAメチル化を測定した。NK0070を添加しvehicleと比較した。HIF-1、VHL、Galectin-3、MMP9、LAT1はhrTGFβ1刺激により低メチル化を生じたがNK0070は10nM、100nMの濃度で低メチル化への抑制を阻害し、分子の発現を相対的に抑制した。ただし、E-cadherin のメチル化に変化がなかった(千原)。以上、NK0070低分子化合物の効果から、PCKラットの嚢胞化進展過程に細胞マトリックス接着に関わる分子の関与が示唆された(東原、石橋)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に計画とした以下のふたつを実施した。 1. PCKラット、雄5週令から15週令まで新規ベンゾイソフラノン誘導体NK0070の投与実験:治療群-1 n=3 NK0070 30mg/kg/day, 皮下投与,対照群(vehicle) n=3 5%gum arabic, 皮下投与。評価:10週間投与実験終了時に左右腎を摘出する。腎重量、血漿中クレアチニン値、形態的評価、免疫染色として、alpha-tubulin 抗体によるcilia の染色、ほかに、アポトーシス、PHA-Eによる血管新生、HIF-1、VHL、Galectin-3、MMP9、LAT1、E-cadherinの各蛋白分子。平成24年度は、動物実験による嚢胞腎の進行抑制の効果を見る実験を行ったが、治療群、未治療群の嚢胞腎に対する免疫染色は未実施である。 2.PCKラット腎からDNAを抽出し、バイサルファイト変換処理の後、各蛋白分子のプライマーをもちいてパイロシークエンサーにてメチル化状態を解析:治療群、対照群、naive群としてSDラットを用い組織からDNAを抽出する。平成24年度は、実験系の確認のために、NRK52E 細胞株をhuman recombinant TGF-bβ1刺激した実験を行った。 PCKラット腎からDNAを抽出したメチル化状態をみる解析実験はまだである。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成25年度は、PCKラット、雄5週令から15週令まで新規ベンゾイソフラノン誘導体NK0070の投与実験:治療群-1(n=5 ) NK0070 30mg/kg/day, sc、対照群(vehicle) (n=5 ) 5%gum arabic, 皮下投与。10週間投与実験終了時に左右腎を摘出しホルマリン固定した組織を用い、形態的評価、免疫染色として、alpha-tubulin 抗体によるcilia の染色、ほかに、アポトーシス、PHA-Eによる血管新生、HIF-1、VHL、Galectin-3、MMP9、LAT1、E-cadherinの各蛋白分子について実施する。 2.平成25年度は、PCKラット腎からDNAを抽出し、バイサルファイト変換処理の後、各蛋白分子のプライマーをもちいてパイロシークエンサーにてメチル化状態を解析し、NRK52E 細胞株をhuman recombinant TGF-bβ1刺激した実験結果と比較する。 3.多発性嚢胞腎の進展に関わる細胞マトリックス蛋白分子を調節している遺伝子について、in silicoケミカルゲノミクスの手法を用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.費用は、抗体、免疫染色の試薬の購入、および実験補助への謝金である。対象は、PCKラット、雄5週令から15週令まで新規ベンゾイソフラノン誘導体NK0070の投与実験:治療群-1(n=5 ) NK0070 30mg/kg/day, sc、対照群(vehicle) (n=5 ) 5%gum arabic, 皮下投与。10週間投与実験終了時に左右腎を摘出しホルマリン固定した組織を用い、形態的評価、免疫染色として、alpha-tubulin 抗体によるcilia の染色、ほかに、アポトーシス、PHA-Eによる血管新生、HIF-1、VHL、Galectin-3、MMP9、LAT1、E-cadherinの各蛋白分子について実施する。 2.費用はメチル化解析の費用、パイロシークエンサーの試薬などである。平成25年度はPCKラット腎からDNAを抽出し、バイサルファイト変換処理の後、各蛋白分子のプライマーをもちいてパイロシークエンサーにてメチル化状態を解析し、NRK52E 細胞株をhuman recombinant TGF-bβ1刺激した実験結果と比較する。 3.費用はin silicoケミカルゲノミクスへの外部委託にあてる。多発性嚢胞腎の進展に関わる細胞マトリックス蛋白分子を調節している遺伝子について、in silicoケミカルゲノミクスの手法を用いて検討する。
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