研究概要 |
我々はこれまでの移植腎生検組織の病理学的検討から、MMPs やその阻害因子TIMPsが移植腎機能評価の指標となり得ると考えている。そこで今年度は以下2つの検討を行った。 検討①移植腎尿細管上皮におけるMMP-9の免疫組織化学的検討―CNI腎障害との関連:156検体の移植腎生検に対してMMP-9の免疫染色を行い、さらに病理所見より細動脈硝子様変化(AH)および尿細管上皮細胞の泡沫状変性(VAC)の有無を評価した。その結果、AHが10.9%、VACが5.1%、両者の併存が2.6%あった。VACを呈した近位尿細管上皮では全例でMMP-9の発現が高く、有意な関連を認めた(p=0.0011)。以上より、移植腎生検の近位尿細管上皮におけるMMP-9の発現はVACに伴い上昇することから、CNIによる尿細管障害を早期に検出できる指標の1つとして期待できる。 検討②腎移植患者における血清中MMPとTIMPの変動の検討:生体腎移植手術を受けた患者16症例より、術前と術後安定期および腎機能悪化時に血清を採取し、MMP-1, 2 ,9とTIMP-1, 2をマルチプレックスアッセイ(Luminex 200)により同時に定量し、臨床パラメータとの関連を解析した。その結果、術後にMMP-1と2は高く、MMP-9は低く、TIMP-1と2は高くなる傾向を示した。また術前s-Crに対しMMP-9は負の相関(r=-0.546, p=0.0286)を、TIMP-1は正の相関(r=0.748, p=0.0009)を認めた。さらに術後日数とTIMP-1には負の相関(r=-0.637, p=0.0080)を認めた。s-Cr上昇を認めたエピソード時にはTIMP-1は著明に上昇し、安定期に低下する傾向であった。以上より、腎移植後の血清中MMPsとTIMPsは移植腎の状態を反映してそのレベルが変化することが示唆された。
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