研究課題/領域番号 |
24592452
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
力石 辰也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80261303)
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キーワード | 腎移植 / MMP / 尿細管上皮 / 腎線維化 / EMT |
研究概要 |
移植腎の障害には、修復・再生を経て回復する場合と、間質の線維化が進行して移植腎の機能不全につながる場合がある。我々はこれまでに移植腎生検組織の病理学的検討から、移植腎の予後(回復か線維化か)を決定づける過程において尿細管上皮で発現するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9が重要な役割を果たしていると考えている。そこで今年度は各種MMPsおよびその関連因子に関して以下の検討を行った。 1)In vivo腎障害モデルの作製:①ラット腎動脈阻血再灌流モデル(一過性腎障害のモデル)と②マウスの一側尿管閉塞モデル(実験的水腎症・腎線維化モデル)を作製し、血清、尿、腎組織の一部を凍結保存するとともに、腎組織のパラフィン組織切片を作製した。 2)In vivo腎障害モデルにおける免疫組織学的検討:MMPsおよびその阻害因子(TIMP-1,2)、各種組織マーカー(上皮系/E-cadherin・β-catenin、間葉系/α-SMA・vimentin、増殖マーカー/ki67、など)の抗体を用いた免疫染色により、腎障害発生後に生じる各種因子の発現を経時的に検討した。尿細管上皮における間葉系マーカーの発現は障害が強くなるにつれて増大しEMTの進行を示す結果となった。一方、腎組織に存在するMMP-9は、動物実験により正常コントロールとの詳細な比較と腎組織全体の観察が可能になったことにより、尿細管の部域によって発現様式が異なることや、正常性を失うことにより発現が低下するタイプと障害に伴って発現が増大するタイプが共存している可能性などが新たに示唆された。そのため、MMP-9の3つの存在様式(潜在型・活性型・中間型)を識別することが重要と考え、その方法を検討した。 3)臨床検体を用いた免疫学的検討:CNI腎症(一過性腎障害)と急性拒絶(腎線維化例)の移植腎生検を用いて2と同様の検討を行い、動物モデルでの結果と比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度はIn vivo腎障害モデルにおける検討と臨床検体を用いての検討の比較を重点的に行った。特に今年度は、MMP-9の潜在型と活性型を免疫組織学的に識別する目的で、エピトープの異なる複数種のMMP-9抗体を用いて詳細な検討を行うことに時間を要した。そのため、平成25年度に計画していた培養細胞を用いたin vitro系での検討が実施できていない。同じく今年度に計画していたマルチプレックスアッセイによる検討はその一部を昨年度に実施した。当初の計画からは達成度は5割程度となるが、新たな検討課題も追加されたので、全体としては7割程度の達成度と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いたin vitro系での検討を優先的に実施し、その培養上清と、平成25度までに得られたin vivoモデルの血清・尿・組織ホモジネート等を用いてELISAやwestern blottingによるマーカー発現量の定量解析を行う。さらに、臨床検体とin vivoおよびin vitro実験系での検討結果を比較し、腎障害で生じる特徴的なマーカー分子の変化から線維化に至る非可逆的な反応の特徴について検討する。
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