研究実績の概要 |
本研究の目的は,妊娠初期婦人の血漿中exosomeに内封されているsmall RNA(Exo-RNA)を量的(RNA濃度)・質的(RNA塩基長)にプロファイリングし,妊娠高血圧症候群(PIH)の予知マーカーとして利用できるか否かを検討することである. H24年度には血漿中exosomeの分離法,Exo-RNAの抽出法, Chip電気泳動による解析法の検討を行った.遺伝子解析に同意を得られた妊娠初期婦人の保存血漿を用いて,H25~26年度には非PIH発症妊婦のExo-RNAのプロファイリングを行い,H 26年度にPIH発症例との比較を行った. Exo-RNAをchip電気泳動で解析すると,サイズの異なる3分画(micro:20-40nt, medium:41-80nt, large:81nt<)が認められた.非PIH発症検体(N=80,n=138)について妊娠週数とExo-RNA濃度との相関を検討したところ, Exo-RNA濃度は個人差が大きく弱い正の相関しか認められなかった.妊娠週数により血漿を4群(6-8w, 9-11w, 12-14w, 15-19w)に分けて比較検討すると,9-11w群のmicro, medium RNA分画の濃度は6-8w群より有意に高値を示した. PIH発症検体(N=4.n=9, 6-8w:n=2, 9-11w:n=3, 12-14w:n=4)のExo-RNAを,妊娠6-14wの非PIH発症検体(n=128)と比較するといずれのRNA分画においても差は認められなかった.例数は少なくなるものの妊娠週数による群分けをして比較すると, 6-8w群におけるmicro RNA分画は非PIH発症検体(n=34, median1.551ng/ml)に対してPIH発症検体(n=2, median2.838ng/ml)では有意(p=0.038)に高値を示した.
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