研究課題/領域番号 |
24592456
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
福井 淳史 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (00321969)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NK細胞 / NKp46 / NK22細胞 / IFN-γ / TNF-α / 妊娠高血圧症候群 / 妊娠糖尿病 / 精液 |
研究実績の概要 |
子宮内膜および末梢血における免疫担当細胞が妊娠の成立および維持に関する役割を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。 原因不明不妊症と不育症患者における子宮内膜および末梢血NK22細胞および細胞内に発現するROR-γtについて検討した。ROR-γt陽性NKp46陽性NK22細胞の割合は不育症群において高値であった。またROR-γt 陽性NK22細胞と不育症で増加していると考えられるIFN-γ、TNF-α産生NK細胞との間には負の相関を認め、NK22は免疫制御的に働くことが考えられた。 NK細胞におけるNatural Cytotoxicity Receptor発現と種々の血管増殖因子からみた妊娠高血圧症候群(PIH)の病態を解明するために妊娠12週における末梢血NK細胞NKp46発現およびサイトカイン産生(VEGF、IFN-γ、TNF-α、TGF-β)を測定した。その後のPIHの有無では差を認めなかったものの、妊娠糖尿病(GDM)を発症した群ではNKp46陽性NK細胞が有意に低値であり、さらにIFN-γ産生NK細胞、TNF-α産生NK細胞が高値、TGF-β産生NK細胞が低値であることが明らかとなった。これらは細胞傷害性の増加を示していると思われ、GDMにおける病態の一端を明らかにしたものと思われる。 また、妊娠成立の場におけるNK細胞による生理的なサイトカイン産生をみるために、子宮NK細胞および末梢血NK細胞を男性精液および従来通りのPMA、Ionomycinを用いて刺激した。精液による子宮NK細胞刺激によりサイトカインが産生されることが明らかとなり、その産生量はPMA、Ionomycin刺激によるものと異なっていた。さらにNK細胞が産生するサイトカインの比(NK1/NK2比)も精液刺激とPMA、Ionomycin刺激では異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れていると思われる。不育症患者、不妊症患者におけるNK22細胞、NK22細胞内ROR-γtの発現については論文作成中である。 またNK細胞の新たなる細胞刺激法については、当初予定したELISPOT法ではなく、フローサイトメトリーを用いて、患者特異的なNK細胞によるサイトカイン産生異常を測定している。子宮内膜および末梢血を精液を用いて刺激しフローサイトメトリーを用いて測定することが可能であることが明らかとなったため、さらに不育症患者や着床不全患者でのデータ集積を行う必要があると思われる。 NK細胞における血管新生因子については、妊娠各週数におけるデータをさらに集積中である。妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病について、今後結果が得られていくと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在行っているNK22細胞に関する論文受理をめざすとともに、現在継続中のNK細胞における血管新生因子に関する検討を行っていく。またNK細胞の新たなる細胞刺激法検討についてはさらに一歩進み、不育症あるいは不妊症カップルにおいて夫精液による妻子宮内膜リンパ球刺激を行い、NK細胞あるいはその他免疫細胞によるサイトカイン産生を測定する予定である。これらの検討により不育症・不妊症の病態の一端がさらに解明されると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を消耗品購入、旅費、その他に充てたが、実験用試薬などの購入の先送りおよび人件費(実験補助)を必要としなかったため残額が生じた。また診療業務など研究業務以外の業務遂行のため研究遂行に遅延が生じたため、平成28年度に研究の一部を検討することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品、旅費、その他、また要すれば人件費に研究費を充てる予定である。
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