研究課題
1.日本産科婦人科学会の周産期登録データベース(10年間分)を用いて、単胎妊婦及び双胎妊婦における正常血圧妊婦(NBP)、妊娠高血圧(GH)、妊娠高血圧腎症(PE)、子癇の発症率を胎児の性別に分けて検討したところ、GHや子癇の発症率は、単胎妊娠や双胎妊娠ともに男児妊娠と女児妊娠との間で差がないが、PEの発症率は単胎妊娠、多胎妊娠ともに男児妊娠に比べ女児妊娠に多いことを再確認できた。2.GH、PEを目的変数とし、分娩時年齢、分娩回数、胎児性別、妊娠中喫煙、糖尿病、腎疾患、非妊時body mass index(BMI)、切迫早産、頸管無力症を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、年齢とBMIから妊婦がGHあるいはPEを発症する予測式を開発し、妊婦さんがどれくらいのオッズ比でGHあるいはPEを発症するかを示すノモグラムを作成した。今後、妊婦への出生前教育における資料として有効活用できる。3.ヘルパー1型T細胞(Th1)とヘルパー2型T細胞(Th2)の比がTh1優位な状態になるときにPEが発症することが知られている。PEを発症した患者において、なぜ女児妊娠で多いかを免疫的な方法で検討したところ、女児を妊娠しているBMIの低い(やせた)妊婦および男児を妊娠しているBMIの高い(太った)妊婦においてTh1優位になる傾向があった。これに対し、母体年齢、児体重、胎盤重量は影響を与えていなかった。4.上記データベースを用いて、非妊時BMIと胎児性別がGHあるいはPEの発症にどのように関与しているかを疫学的に検討したところ、女児を妊娠しているBMIの低い(やせた)妊婦ほどPEの発症率が高く、BMIの高くなるに従い、女児優位の傾向がなくなった。これに対し、GHでは非妊時BMIとの関連性はなかった。5.疫学的にも免疫学にもGHとPEは異なる疾患であるため、異なる治療戦略が必要である。
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医学のあゆみ
巻: 250 ページ: 541-545
周産期医学
巻: 44 ページ: 1415-1423