切迫早産の治療転帰は、早産(A群)、治療終了直後分娩(B群)、治療終了後いったん退院(C群:over treatmentの可能性)に大別される。A群では、子宮内炎症・感染が主な原因であり、胎児炎症反応症候群、感染症に注意した娩出時期を検討する必要があるが、その子宮内炎症を羊水中のサイトカイン(IL-8)を用いて具体的に組織学的絨毛膜羊膜炎のどの段階であるのかを予測する方法を報告し、また、病原微生物の存在は38.0%に認め、これらの有無を確認した上で抗菌薬を適切に使用することが妊娠延長期間に影響していた。さらに頸管熟化傾向が強い症例に対しては、黄体ホルモン製剤が早産予防に役立っている可能性が示唆された。B群およびC群においては、子宮内の軽度炎症(組織学的絨毛膜羊膜炎Ⅰ度に満たない程度)が、maintenance(long-term) tocolysis終了直後の分娩(31.2%)と関連があることが示唆された。 自然早産の分娩時期は、その組織学的絨毛膜羊膜炎(子宮内炎症)の重症度に最も影響を受けるとされるが、本研究からもそれを支持する結果が得られた。特に、maintenance tocolysis終了直後の分娩にも、この子宮内炎症が関与している点は、新しい知見である。また、この原因のひとつと考えられる子宮内病原微生物の存在する確率は、当院で開発した高感度PCR法によれば、38.0%であり、培養法が陰性であっても分娩予後は不良であることが確認された。さらに、病原微生物陰性例に対する抗菌薬の使用はかえって妊娠期間を短縮させており、注意すべきと考えられた。
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