研究課題/領域番号 |
24592466
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
深澤 宏子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60362068)
|
研究分担者 |
平田 修司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (00228785)
|
キーワード | 体細胞核移植 / 未成熟卵 / 体外成熟培養 / ntES 細胞 / 再生医療 |
研究概要 |
未成熟卵子の体外成熟による体細胞核移植用の未受精卵子の作出に関する研究 将来的に、人では排卵誘発を行わないことを想定しているため、研究に用いる未受精卵の採取に際しては、排卵誘発剤を投与していないマウスの卵巣より卵核胞期(GV)卵と卵丘細胞の複合体の状態で実体顕微鏡下に単離し、体外成熟培養に供している。しかし、この体外培養において、卵丘細胞の増殖を促進する羊膜成分抽出物をコーティングしたディッシュを用いたり、培養液の組成を変更して、より多くの成熟卵を得る条件を検討したが、培養液や成熟環境以上に、もとの未熟卵の状態が大きく影響することが明らかとなった。未熟卵の状態が一定しないと、培養液などの条件を検討することができないため、まず、未受精卵の採取に当たり、未熟卵をどのように採取するのが最も効率的かの検討を現在行っている。 除核未受精卵子の凍結保存に関する研究 すでに、除核未受精卵子を一旦凍結保存したのち融解し、体細胞核移植を行い、胚盤胞まで到達することは明らかにした。しかし、その率は非凍結卵子を用いたときよりもかなり低いため、この効率をあげるための検討を行っている。受精卵ではなく卵子の凍結保存法も日々進化しており、凍結の方法を改良することで、少しでも除核未受精卵の細胞質の凍結によるダメージを減らし、その後に行われる体細胞核移植による再構築胚の発生率をあげることにより、体外成熟卵への応用が期待できると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未成熟卵の体外成熟培養により体細胞核移植用の未受精卵子を作出し、体細胞核移植を行い、体細胞核移植胚由来の胚性幹細胞が得られることを確認した。まだ、発生率が低いことから、体外培養に用いる培養液を変更したり、培養条件を検討したところ、培養液や環境条件よりも、最初に得られた未熟卵の状態に大きく左右されることが明らかとなった。最初の未熟卵の状態が一定しないと、培養液や環境の条件を検討することも難しく、この段階でやや遅れをとっていると考えている。現在、この問題を解決すべく、採卵時の未熟卵のステージや採卵法に関して基礎的検討を行っている。さらに、体外成熟培養を行った未受精卵を除核し、凍結保存してさらに体細胞核移植を行うことを念頭に、まず、新鮮未受精卵を一旦凍結保存して解凍し、体細胞核移植を行い、そこから凍結保存後の体細胞核移植胚を構築し、非凍結卵細胞質を使用した体細胞核移植胚より発生率は低いものの、胚盤胞まで到達しntES細胞もすでに樹立しているが、こちらも、細胞質に与える凍結の影響が大きく、発生率がなかなか上昇しないため、凍結法の改善を図っている。
|
今後の研究の推進方策 |
未成熟卵子の体外成熟をより効率的に行うための、基礎的研究を進めていく。具体的には、体外成熟に供する未熟卵のステージや採取法を検討して確立し、一定の状態の未熟卵を用いて、さらに培養液、培養環境要因等を検討してより多くの成熟卵を得る条件を探求する。また、卵子の凍結技術も進歩しているため、さらに凍結融解による卵細胞質への影響を少なくする方法を模索し、凍結融解後の体細胞核移植の効率をあげる検討を行う。 なお、体細胞核移植技術は発展途上の技術であり、体細胞核移植胚の初期発生率は様々な技術的改良が試みられているものの未だに低い。本研究では多数の再構築胚を作出する必要があり、そのためには、多くの未受精卵を準備し、多数回の体細胞核移植を施行する必要がある。また、作出した再構築胚、ならびにこれらの再構築胚に由来するntES細胞の正常性や多能性の解析をおこなうために、多くの再構築胚を偽妊娠マウスへ移植、あるいはキメラマウスの作出実験が必要となる。したがって、次年度以降の研究費の大部分は実験動物の購入費、培養液、ES細胞の維持・細胞分化試薬、ならびに、体細胞核移植用の消耗品に充当する。さらに、これまでの成果を学会において発表・討議するために、一部、旅費に充当する予定である。 なお、体細胞核移植実験の遂行に必要な実験設備は申請者らの研究室に既に完備しているので、今回の研究費においては設備備品を購入する予定はない。
|