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2012 年度 実施状況報告書

妊産婦と胎児環境における亜鉛の重要性と補充療法の有効性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24592467
研究種目

基盤研究(C)

研究機関浜松医科大学

研究代表者

内田 季之  浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90570234)

研究分担者 金山 尚裕  浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
伊東 宏晃  浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (70263085)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード亜鉛
研究概要

研究目的は妊婦への亜鉛投与の有用性を検討することである。
今年度は臨床研究として鉄欠乏性貧血妊婦に対し鉄だけでなく亜鉛を添加して投与した亜鉛+鉄群(N=31)と鉄群(N=54)に分け無作為比較試験を行った。年齢、BMI、分娩時妊娠週数はいずれも両群で有意差を認めなかった。ヘモグロビン上昇率(%)は亜鉛+鉄群(N=31)で21.7±14.8(平均±標準偏差)%に対し鉄群(N=54)で13.5±16.2%であり、有意に亜鉛+鉄群で上昇していた。ヘマトクリット上昇率(%)は亜鉛+鉄群で18.8±11.8%、鉄群で11.2±12.9%であり有意に亜鉛+鉄群で上昇していた。亜鉛+鉄群(N=11 )、鉄群(N=24 )のそれぞれにおいて妊娠後期と妊娠中期を比較し血清フェリチン値と血清鉄濃度は有意に妊娠後期に上昇していたが、両群とも血清亜鉛濃度は妊娠後期と妊娠中期を比較し有意差は得られなかった。出生時体重、Zスコア、身長、頭囲、胸囲、胎盤重量を検討した。全ての項目で両群間に有意差を認めなかった。Apgarスコアは亜鉛+鉄群(N=31 )で1分値、5分値がそれぞれ8.13±1.67、8.84±1.59、鉄群(N=54)でそれぞれ8.57±0.74、8.80±1.50であり1分値、5分値ともに両群間で有意差はみられなかった。急遂分娩率、新生児入院率は亜鉛+鉄群(N=31 )でそれぞれ16.1%、22.6%、鉄群(N=54)でそれぞれ13.0%、22.2%であり、両群間で有意差を認めなかった。
本研究の無作為比較試験でも亜鉛の補充は貧血の著明な改善を示し、母体への副作用、新生児予後に悪影響を与えることはなかった。出生時体重、Zスコアは亜鉛補充により大きくなる傾向は示した。解析方法によって亜鉛補充が胎児発育を有意に促進する結果となるかもしれない。今後、検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究目的は臨床での亜鉛補充による胎児発育促進、胎児の過剰な酸化ストレスからの防御機構維持への期待である。今年度は胎児発育への影響の可能性は見いだせ、副作用が明らかに上昇しないことを証明できた。動物実験による亜鉛の胎児に対する抗酸化作用を検討する実験が進まなかったことが達成度が遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

亜鉛投与によっても血清亜鉛濃度は血清鉄濃度やフェリチンのように鋭敏に上昇しない。アルブミン濃度、ヘモグロビン濃度にも血清亜鉛濃度は影響するが、投与の状況についてのマーカーにはならない。妊娠中においては母体血清銅値が極めて上昇することが判明した。臍帯血では銅は正常値に戻っており胎盤、亜鉛値との関連が強いことが想像された。亜鉛補充研究の際には亜鉛値だけでなく血清銅値も測定することとする。前年度は合併症のない鉄欠乏性妊婦の胎児発育への影響を検討したが、次年度は胎児発育不全、妊娠高血圧症候群の発育不良の児を持つ母体、臍帯血の検討を行う。
本来行う予定であった妊娠動物モデルでの亜鉛の羊水注入による抗酸化作用の検討「ZnとMg添加による抗酸化作用を持つ人工羊水注入療法の開発」を行う。本研究計画では、霊長類マーモセットを用いた子宮内感染モデルを調整し、この新規人工羊水による抗酸化作用の有効性を検証しヒトへの応用を目指す。この動物実験の成果をまとめ次第、同意の得られた妊娠中期破水症例に対し(妊娠26週未満)での人工羊水注入療法前向きコホート研究-新規人工羊水と既存の生理食塩水との比較検討を行い26週以降に妊娠維持し、胎児への酸化ストレスを防御するために臨床応用することを目的とする。
妊婦が亜鉛を胎児へ輸送のシステムを解析するにあたって胎盤でのトランスポーター蛋白の同定が必要となるため、帝王切開で得られた胎盤を用いてZn輸送タンパク質候補であるタンパク質群の遺伝子をヒト遺伝子バンクより同定し、それぞれの過剰発現ベクターを作成する。過剰発現ベクターを用いてCOS-7細胞に発現させ、培養上清に65Znを投
与しZn結合蛋白としての結合機能解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

1 胎児発育不全、妊娠高血圧症候群症例の母体血亜鉛濃度・銅濃度・鉄濃度、臍帯血亜鉛濃度・銅濃度・鉄濃度と胎児発育の関連(前年次での研究を発展させた臨床研究)
2 ZnとMg添加による抗酸化作用を持つ人工羊水注入療法の開発
3 前期破水症例(妊娠26週未満)での人工羊水注入療法前向きコホート研究-新規人工羊水と既存の生理食塩水との比較
4 胎盤におけるZnトランスポーターとなるキャリア蛋白の同定、機能解析
上記研究計画における検体測定、動物購入・維持、培養に必要な物品費、データ解析に必要な解析ソフト費、謝礼費、論文作成費、学会発表に伴う旅費を研究費として使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 母体血中、臍帯血中、羊水中の微量金属濃度について2012

    • 著者名/発表者名
      内田季之
    • 学会等名
      日本産科婦人科学会
    • 発表場所
      神戸国際展示場
    • 年月日
      20120413-20120415
  • [学会発表] 妊産婦と胎児環境における亜鉛の重要性と補充療法の有用性

    • 著者名/発表者名
      内田季之
    • 学会等名
      近畿亜鉛栄養治療研究会
    • 発表場所
      株式会社シノテスト 大阪支店
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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