研究実績の概要 |
これまでに当研究室で樹立したヒト不死化非黄体化顆粒膜細胞に、初期卵胞発育に重要な因子であるGrowth differentiation factor-9 (GDF-9)を添加し、マイクロアレイでコレステロール合成系にかかわる酵素群(HMGCS, HMGCR, SQLE, LSS, CYP51, SC4MOL)の増加をみとめ、ヒト黄体化顆粒膜細胞初代培養で上記酵素群の発現を解析し、妊娠群と非妊娠群の間で発現に有意差がある物質があることを報告した。平成26年度では、さらにGDF-9依存性の顆粒膜細胞遺伝子発現変化を検証し、顆粒膜細胞増殖に関わるいくつかの遺伝子の変化を見出した。これらの因子の添加実験を行った。卵胞発育への影響についてはさらなる検討が必要であると思われた。 もうひとつの脂質メディエーターである顆粒膜細胞で産生されるスフィンゴシン1リン酸(S1P)については、これまでにSIP添加により、ヒト不死化非黄体化顆粒膜細胞ならびに体外受精採卵時に得られた初代培養黄体化顆粒膜細胞の増殖が促進し、細胞増殖シグナルであるPI3K-Akt経路の活性化を確認した。S1Pの添加により酸化ストレス(H2O2添加)による顆粒膜細胞のアポトーシスが抑制されることを見出した。平成26年度は、この作用が卵巣保護につながるかどうか検証した。顆粒膜細胞株に各種抗がん剤を投与し、この際のアポトーシスがS1P同時添加で抑制できるかどうか検証するとともに、動物モデルにS1Pを投与し、抗がん剤投与時の卵胞消失の変化、凍結卵巣再移植時の生着効率の変化を検証した。ヒトへの応用についてはさらなる検討が必要と思われた。
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