研究課題/領域番号 |
24592470
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸保 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00508236)
|
研究分担者 |
藤原 浩 金沢大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授(Professor) (30252456)
|
キーワード | 血小板 / 血管リモデリング / 絨毛細胞 / 妊娠高血圧症候群 / 胎児発育不全 |
研究概要 |
ヒト胎盤において、絨毛の一部は母体面と接着する。絨毛の母体面付着部ではtrophoblastの幹細胞であるcytotrophoblast (CTB) は重層化し、cell columnを形成する。Cell column内でCTBは浸潤能をもつextravillous trophoblast(EVT)へと分化し、母体脱落膜 (interstitial trophoblast (iEVT))およびらせん動脈 (endovascular trophoblast (eEVT)) へと浸潤していく。eEVTの浸潤によりらせん動脈は再構築(リモデリング)され、血管径が増大し、種々の血管作動物質への反応性を失う。広範ならせん動脈リモデリングは霊長類に特異的な現象であり、正常な胎児発育に必要な絨毛間腔への血流確保に不可欠とされる。我々の研究の目的は、その分子機構を明らかにすることである。 平成21-23年度基盤研究(C)「母体血小板と絨毛細胞の相互作用:PIH、IUGRの病因解明をめざして」の中で、CD9、TGFβ受容体、インテグリンα5、MCAMなどの細胞表面分子がeEVTで高発現していることを明らかにした。今回はCD9に着目し、平成24年度はEVTを不死化したSwan71細胞を用いてその機能解析を行い、CD9が浸潤抑制に働いている可能性が明らかとなった。平成25年度はSwan71細胞を低酸素下で培養するとCD9の発現が減少することを確認した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells(HUVEC))とSwan71細胞を共培養することで、Swan71細胞のCD9の発現が増加した。レンチウイルスを用いたshRNA導入によりCD9がノックダウンされたSwan71細胞とHUVECとを共培養し、それぞれの細胞動態を観察することに成功した。CD9をノックダウンされたSwan71細胞では明らかな形態変化は認めなかったが、CTR shRNAを導入したSwan71細胞もしくはshRNAを導入していないSwan71細胞とHUVECを共培養した場合、Swan71細胞は管状構造を形成することを確認した。CD9が血管再構築に関わっている可能性が示唆される結果であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レンチウイルスによるEVTへのshRNA導入の条件設定が難しく、満足のいくノックダウン効率を達成できていない。また、Swan71細胞とHUVEC細胞との共培養実験の条件設定にも時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の研究計画に記載しているように、eEVTによる血管浸潤のin vitroモデルを確立することが重要であると考えている。HUVECとの共培養により管状構造をとるSwan71細胞が血管内皮への分化を示しているか解析を行う。不死化していない初回培養の分離EVTについてもレンチウイルスを用いた方法でCD9をノックダウンし、マトリゲル浸潤実験、細胞増殖実験、HUVEC共培養実験によりCD9の機能を解析する。またSwan71細胞同様にHUVEC共培養実験によりEVTが管状構造をとることは確認できているので、管状構造をとったEVTで他の分子の変化を解析する。さらに、他のeEVTマーカー(TGFβ受容体、インテグリンα5、MCAMなど)についても同様の手順で機能解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に解析予定であった細胞の培養が遅れたため。 細胞培養が終了次第、解析を行う。その際に必要になる抗体等を購入する。
|