研究課題
本課題では,筋腫の発生機序にX染色体不活性化(XCI)の破綻によるX染色体上の低メチル化変異遺伝子の発現異常,あるいはXCI関連遺伝子の機能異常が関与するとの仮説の基に,筋腫で共通して低メチル化変異を呈する遺伝子およびXCI異常に関わる因子について検証してきた。平成24年度には,筋腫で低メチル化変異するX染色体上の遺伝子を2つ特定したが,これらの遺伝子は筋腫で高発現しておらず,DNAメチル化がこれらの発現制御に関与しないことが判明した。従って,筋腫の発生がX染色体上の低メチル化変異遺伝子の発現異常に起因するとの仮説は否定された。平成25年度には,筋腫におけるXCI異常に関わる候補遺伝子を特定した。まず,XCIに関与するポリコームグループ(PcG)の機能を同様にPcGにより制御される刷込み遺伝子を指標に評価したところ,刷込み遺伝子では低メチル化変異は生じておらず,PcGの機能に異常がないことが示唆された。次に,既知のXCI関連遺伝子について,多数症例で発現解析を行った。その結果,解析した全筋腫検体で共通して高発現したSATB2をXCI異常に関わる遺伝子候補として特定した。平成26年度には,特定した候補遺伝子SATB2の機能解析とその評価のために筋腫特異的バイオマーカーの同定を行った。SATB2の機能解析は異種移植の系で検証した。まず,ヒト子宮平滑筋細胞にSATB2を過剰発現した細胞株を作製し,次に作製した細胞株を免疫不全マウスの腎被膜下に移植するというin vivo子宮筋腫形成モデルを構築した。機能解析の評価には正常平滑筋と筋腫を区別するバイオマーカーが必要だが,現在,有用なマーカーは存在しない。そこで,DNAメチル化を指標に独自の評価系を構築した。10個の遺伝子のメチル化状態を指標として,正常平滑筋と筋腫を明瞭に区別できる遺伝子セットを検索しパネル化した。
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Mol Endocrinol.
巻: 10 ページ: 1656-69
10.1210/me.2014-1117