研究課題/領域番号 |
24592475
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北島 道夫 長崎大学, 大学病院, 講師 (50380845)
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研究分担者 |
KHAN KHALEQUE 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60336162)
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キーワード | 子宮内膜症 / 卵巣チョコレート嚢胞 / 卵巣予備能 / 妊孕性温存 / 卵巣皮質組織 / 卵胞発育 |
研究概要 |
本年度は,卵巣表層に存在する顕微鏡的な微小子宮内膜症病変が周囲の正常卵巣皮質組織に与える影響を解析し,組織炎症と卵巣予備能との関連を検討した.連続組織切片のHE染色標本から顕微鏡的内膜症病変の有無を評価し,内膜症組織や炎症細胞浸潤のある卵巣組織を選択したうえ,それらでの組織学的特徴を検討した.内膜症病変では微小血管の増生とマクロファージ浸潤およびそれらに一致してHGFの発現が認められた.内膜症病変周囲では著明な線維化に伴って卵巣表層上皮の陥入および封入嚢胞が認められた.陥入上皮は腹膜中皮の性状を維持していたが,嚢胞壁では上皮への化生が認められた.周囲皮質では間質組織の破壊と初期卵胞の閉鎖が認められた.これらは,経卵管月経血逆流により卵巣表層に付着した内膜組織が生着・進展するに従って周囲皮質では組織恒常性が消失し,初期卵胞の消失=卵巣予備能の低下につながることとを示す結果である.また,卵巣チョコレート嚢胞は表層微小内膜症病変による組織破壊・線維化と内膜症から放出されるサイトカインによる化生変化が起点となって形成されることを支持する所見である. 内膜症および非内膜症コントロールから得られた腹水中のAMH,IL-6あるいはTNFa濃度を測定した.腹水中AMH濃度はコントロールに比して重症内膜症で有意に低下しており,内膜症群では腹水中AMHに年齢や末梢血AMH濃度との間に有意な相関は認められなかった.一方,内膜症では腹水中AMHとIL-6は逆相関を示す傾向が認められた.これらは,腹水中AMHが内膜症の炎症性腹腔内環境を関連していることを示唆している所見と考えられた. 前年度までに得られたチョコレート嚢胞形成過程での組織炎症が周囲皮質組織に存在する初期卵胞の恒常性に与える影響は,「burn-out現象」として子宮内膜症における卵巣予備能低下の新たな病態と捉えられ,論文にまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は卵巣皮質組織における炎症関連遺伝子発現をlaser capture microdisectionにより解析する予定であったが,組織形態および組織中mRNAが適切に維持された凍結卵巣皮質組織を得ることが困難で,組織特異的mRNAの解析が遅れている.組織の凍結および切片の作成並びにlaser capture microdisectionの行程でのmRNAの質の保持が困難なところに起因する問題と考えられるので,それら手技の調整を行い実験手技の適正化が必要である. ELISAおよび免疫組織化学的手法による解析を優先的に行い,機器の調整を行いつつ実験を行っていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
腹腔鏡手術を施行する子宮内膜症および非子宮内膜症コントロールから末梢血・腹水および卵巣皮質組織の収集に努め,検体数の増加を図る. フローサイトメトリーおよびlaser capture microdisectionによる解析を進めるが,同時に組織中に発現遺伝子をwhole tissue sampleから得られたmRNAを用いてRT-qPCRで定量解析を試みる. 腹水中あるいは組織中に発現している炎症関連蛋白(サイトカイン・ケモカイン)および組織間接着因子の発現を免疫組織化学的手法あるいはELISAを用いて追加検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用する組織処理用薬品,各種1次抗体,ELISAキットあるいはガラス・プラスチック消耗品等の使用量が当初の予想を下回ったためである. 本研究では引き続き次年度に行う予定の実験において使用予定の1次抗体.ELISAキット,PCR用キットの購入に充てる予定である.
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