子宮内膜症による骨盤内炎症が卵巣機能に及ぼす影響を検討した.子宮内膜症は,卵巣皮質の炎症・線維化と表層上皮の陥入・化生変化を促進し,チョコレート嚢胞の発生・進展とともに卵巣皮質における原始卵胞の恒常性維持機構を破綻させる.その機序として,原始卵胞のリクルートメントと初期発育卵胞の閉鎖が同時に亢進して卵巣予備能の低下が進行する病態(burn-out)を明らかにした.チョコレート嚢胞への外科処置は卵胞発育に影響を与え,骨盤内炎症の重症度は術後の卵巣機能の回復に関与する.これらは,骨盤での局所炎症が女性の生殖機能に持続的な影響を与え,早期の医療介入が卵巣予備能の低下を予防できる可能性を示唆している.
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