研究概要 |
脳内アセチルコリン受容体遮断による交感神経優位な状況での易脳障害性を検証することを主な目標とした;7生日のWistarラットを用い、左側の頸動脈を結紮した後に33℃の環境下で1時間の8%低酸素負荷を行う実験モデル(Levine-Riceモデル)を作成した。このモデルでは通常1時間の低酸素負荷で通常脳障害は観察されない。神経遮断薬にはメカミラミン(非選択的ニコチン受容体遮断; 5 ,10mg/kg、皮下注)、メチルリカコニチン(α7選択的ニコチン受容体遮断;5, 10mg/kg、皮下注)、アトロピン(ムスカリン受容体遮断;10mg/kg、皮下注)を使用した。実験から7日目に脳障害の程度を観察した。また酸素負荷後のマイクログリア集簇が迷走神経刺激薬であるカルバコール(0.1mg/kg、皮下注)投与で抑制されるかどうかも検討した。 結果:重篤な障害の程度は対照群では10%以下だった。一方、メカミラミンとメチルリカコニチン投与群では軽度の低酸素負荷にも関わらず量依存性に重篤な障害を残した(30~40%, p=0.02)。特にメカミラミン投与群は障害が顕著だった(70%が重篤な障害、p<0.01)。アトロピン投与群での障害は軽度だった。2時間の低酸素負荷では脳内マイクログリア集簇はカルバコール投与で対照群の1/6に減少した。 考察:先に行った迷走神経刺激実験とも併せて、迷走神経系の脳保護作用が示された。マイクログリアの集簇を抑制することから脳内迷走神経系の炎症反応抑制への関与が示唆された。(関連業績:Furukawa S, et al. Activation of acetylcholine receptors and microglia in hypoxic-ischemic brain damage in newborn rats. Brain Dev. 2012 Nov 7.)
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