研究実績の概要 |
我々は幼弱ラットの低酸素虚血による脳障害モデルでアセチルコリン刺激薬あるいは遮断薬が脳障害を劇的に軽減もしくは増幅する事を報告した(Furukawa S, et al. Reprod Sci. 2010; Furukawa et al., Brain Dev. 2013)。その過程でミクログリアの活性化と脳障害が深く関係することを見いだした(Furukawa et al., Brain Dev. 2013)。また低酸素虚血後のミクログリアの活性化のタイミングが脳の各部位で異なる事も見いだした(Furukawa S et al., Brain Res. 2014)。 脳内部位別で異なるミクログリア活性化のタイミングに合わせ、薬物による迷走神経刺激を行う事でミクログリアの活性化の抑制と脳障害の軽減できることも実証した。(Furukawa S et al., J Perinat Med. 2013 )。このように脳内アセチルコリン受容体の刺激は脳障害軽減に有効で、低酸素虚血後の長期的な脳内炎症を抑制できることを示した。脳内炎症は長期的には小児期領域での多動症、成人領域でのアルツハイマー病に代表される白質障害に関与する可能性がある。そこでアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるガランタミンを用いた実験を行ったが、低酸素負荷前投与群では脳障害が軽減されたが、加えてミクログリアの集積を伴うことなく、またIL-1βの上昇も認めなかった(Furukawa S, et al. Int J Dev Neurosci. 2014)。この結果から低酸素虚血で活性化したミクログリアはIL-1βなどのサイトカインを産生に関与していること、低酸素虚血後早期から活性化するミクログリアを作用時間の長いアセチルコリンエステラーゼ阻害薬を用いて抑制することで、炎症のリクルートメントが抑制されることが分かった。以上、我々の研究から脳障害抑制には脳内迷走神経系が重要な役割を果たしていることが判明した。
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