研究概要 |
264人の原因不明不育症患者と195人の健常女性のアネキシンA5の6種類の遺伝子多型を調べたところ、SNP5の頻度が患者群で有意に高いことが確認できた。しかし、その次の妊娠における出産率はrisk allele有・無で84.0 % 、84.3 %と、全く差がないことが判った。 凝固第V因子奈良変異は最近深部静脈血栓症に罹患した少年に発見された。Leiden変異と同様にプロテインC抵抗性を示すことで静脈血栓症を起こすことが明らかになった。このFV Naraと凝固第V活性を88人の原因不明習慣流産患者と97人の健常女性に調べたところ、FV Naraは一人もみつからなかった。また、第V活性は両群間で差を認めなかった。FV Naraは一般集団では希な変異であり、習慣流産には関係しないと考えられた。 279人の原因不明不育症患者と100人の健常女性に凝固第XII因子と46C/T多型を調べた。ループスアンチコアグラントLA陽性患者のXII活性は有意に低下していた。そこで、9人のLA陽性患者を除外して検討したところ、患者群ではCT genotypeが有意に高頻度であることが判った。しかし、その後の妊娠ではCC, CT, TT群で出産率の差はみられなかった。また、XII因子が低くても出産率の差はみられなかった。 ANXA5、XIIは不育症易罹患性遺伝子であるが、その臨床的影響は小さく、臨床的に調べて治療を行う意義はないことが確認された。
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