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2013 年度 実施状況報告書

ヒト着床における子宮内膜上皮細胞の運動動態の解明と新規着床支援療法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 24592484
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

内田 浩  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90286534)

研究分担者 丸山 哲夫  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10209702)
升田 博隆  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80317198)
キーワード着床 / 子宮内膜上皮細胞 / 細胞運動 / グリコデリン
研究概要

生殖補助医療とりわけ体外受精での不成功原因の最大因子は着床障害であり、原因はその機序が受精過程に比較して解明されていない点にある。前年度に子宮内膜上皮細胞層のreal time video recordingを用いた顕微鏡動画像の観察によって、「胚陥入路形成のための子宮内膜上皮細胞層の破壊は、従来唱えられてきた細胞死説よりも胚からの逃避運動亢進による迅速な生体反応の方が大きく寄与している」ことを明らかにしつつあるが、平成25年度は、その子宮内膜上皮細胞の運動機序に焦点をあてて解析を進めた。
異種細胞間の接触に始まる「着床」において子宮内膜上皮細胞に胚モデル回避的な遠心性の運動が生じるのが、子宮内膜上皮細胞に特異な現象であるのか検討を加えたところ、種々の細胞株を使用した結果から、回避運動に程度の差は認めるものの、子宮内膜上皮以外にも認める現象であることが明らかとなった。これはヒト病理的に子宮内膜のない部位に着床する異所性妊娠の機序解明につながる知見である。子宮内膜上皮に着床期に有意に発現するタンパク質としてGlycodelinが知られるが、使用した細胞株のうち、興味深いことに、Glycodelin発現を認める細胞株ほど回避運動が顕著な傾向にあった。
また、回避運動が種々の上皮に認められる現象として存在するにしても、回避運動のトリガーとなるのは胚モデル特異的な現象であるか否かの解析も着床機序解明には有用となる。そこで絨毛癌由来のJAR細胞以外の細胞株やマテリアルを用いて、その椅子細胞間相互反応である「着床」の胚側から子宮内膜へのアプローチの機序にも着目して検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

従来の細胞死説に加えて、ヒト着床における「胚陥入路形成のための子宮内膜上皮細胞層の破壊は、胚からの逃避運動亢進による迅速な生体反応」という作業仮説に対して、「細胞死依存機序よりも細胞(回避)運動機序に依存している」という明確な事象であることを、real time 観察によって捕捉することに成功した。
その特異な動態(細胞運動)である「着床」現象が、胚―子宮内膜上皮のコンビネーション特有の生命現象であるのか、あるいは類似の生命反応を生体は随所で応用し合目的に利用しているのか検討を進めている。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、上記に記載した通り、異種細胞間相互反応である「着床」の細胞動態の特異な上皮細胞回避運動のトリガーの検討を、多角的に解析していく予定である。
すなわち胚側因子として特異的な細胞の特徴が必要条件となるのか否かにつき検討を加える(胚モデルとしての絨毛癌細胞株spheroidを他の細胞株や、無機的担体に変更するなどして特異的な子宮内膜上皮細胞回避運動に変化が見られるか検討)。
さらに回避運動のトリガー条件として、内分泌的環境、epigeneticな環境も候補因子に上がるため、引き続き卵巣ステロイドホルモンおよびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)添加条件下での、子宮内膜上皮細胞回避運動の比較検討を行う。
一方で、子宮内膜上皮細胞-胚複合体 (Endometrial Epithelial cells- Embryo [EEE] complex)による新たな胚移植法の技術的基盤確立へ向けて、温度感受性培養皿を用いた、en blockでの細胞塊の移動(移植)方法の確立を目指す。同時にen block transferの標的を子宮内膜組織(上皮細胞+間質細胞)-胚複合体へと応用するための、子宮内膜上皮細胞および子宮内膜間質細胞モデルの多層化(三次元)培養法の技術検討を進めていく。

次年度の研究費の使用計画

未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
次年度の研究費と併せて消耗品購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)

  • [雑誌論文] Molecular analysis of a mutated FSH receptor detected in a patient with spontaneous ovarian hyperstimulation syndrome.2013

    • 著者名/発表者名
      Uchida S, Uchida H, Maruyama T, Kajitani T, Oda H, Miyazaki K, Maki Kagami, Yoshimura Y
    • 雑誌名

      PLoS One.

      巻: VOL. 8 ページ: e75478

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0075478.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Possible involvement of nerve growth factor in dysmenorrhea and dyspareunia associated with endometriosis.2013

    • 著者名/発表者名
      Kajitani T, Maruyama T, Asada H, Uchida H, Oda H, Nishikawa-Uchida S, Miyazaki K, Arase T, Ono M, Yoshimura Y
    • 雑誌名

      Endocr J.

      巻: 60 ページ: 1155~64

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Achievement of pregnancies in women with primary ovarian insufficiency using close monitoring of follicle development: case reports.2013

    • 著者名/発表者名
      Maruyama T, Miyazaki K, Uchida H, Uchida S, Masuda H, Yoshimura Y
    • 雑誌名

      Endocr J.

      巻: VOL. 60 ページ: 791~7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Human uterine stem/ progenitor cells: Implications for uterine physiology and pathology.2013

    • 著者名/発表者名
      Maruyama T, Miyazaki K, Masuda H, Ono M, Uchida H, Yoshimura Y
    • 雑誌名

      Placenta.

      巻: VOL. 27 ページ: S68~72

    • DOI

      10.1016/j.placenta.2012.12.010.

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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