研究実績の概要 |
多嚢胞性卵巣症(Polycystic Ovary Syndrome,PCOS)は、月経異常,多嚢胞性卵巣,血中男性ホルモン高値またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常を満たす疾患で体内環境ホルモンの異常で生じるが原因の解明はされていない。本研究においてはステロイドホルモンの一種であるアンドロゲンをマウスに投与しPCOを作製し、その卵巣内環境ホルモンの異常がどのように卵母細胞成熟に関与するのかをセロトニンを中心に組織学的および分子生物学的に検討した。平成25年度は4-5日齢の雌マウスに、アンドロゲンの一種であるTestosterone propinate(TP)をゴマ油とエタノール(9:1 v/v)に溶解したものを、0.5~1.0mgを腹腔に1回注射をおこなって5週齢経過以降の個体よりPCOを作製した。そのPCO組織においてセロトニン、およびセロトニン最終合成酵素と知られるDDC(Dopa decarboxylase)、セロトニン合成の律速段階酵素であるTPH-1(Tryptophan-5-hydroxylase)の免疫染色をおこなったところ、PCOの組織においてコントロール組織と比較すると、その発現様式に違いを認めた。セロトニンの染色においては正常組織においては夾膜には染色するが、卵胞の顆粒膜細胞には染色されず、一方PCO組織においては異常に嚢胞化した卵胞の顆粒膜組織においてセロトニンの発現が強くなっていた。同様にTPH-1の染色においても染色の強弱はあるが卵胞形成が進むにつれて強く発現されていた。DDC染色は逆に成熟卵胞では発現が減少する傾向を認めた。一方セロトニン受容体の種類の検索を行うためにセロトニンレセプター5-HT2A、5-HT2B、5-HT7遺伝子などの受容体の染色を行ったところ、5-HT2Bは卵胞形成が成熟するにつれて発現が増加傾向にあり、5-HT2A、5-HT7はほとんど染色されなかった。本研究ではPCOにおける異常卵胞の形成にセロトニンの増加が5-HT2Bの受容体を介して関与していることが考えられた
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