研究課題/領域番号 |
24592494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
前原 佳代子 独立行政法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 室長 (80421311)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 周産期疾患 / 一塩基多型 / ゲノム |
研究概要 |
本研究は、次世代シークエンサーで取得した大規模配列解析情報やマイクロアレイ技術で取得したゲノムワイドな一塩基多型(SNP)情報を駆使し、産科領域の難治性疾患や稀少疾患の関連遺伝子を解明する事を目的とする。 平成24年度は、遺伝子解析に同意した反復胞状奇胎や、流早産を繰り返し生児を得られなかった不育症の数症例の母体末梢血液gDNAを抽出し、約60 Mbの全エクソン配列を網羅したオリゴキャプチャーで、gDNAからエクソン領域を選択的に捕捉回収し、次世代シークエンサー(HiSeq)で網羅的に配列情報を取得した。配列情報のMapping、dbSNPとの異同比較、アミノ酸置換の評価を行い、エクソン解析による候補遺伝子の絞り込みを試みた。コントロール症例(リファレンス)には、1000人ゲノムプロジェクトの日本人データを利用し、SNPの頻度が0.02以上を候補遺伝子から除くことにした。その結果、1症例につき、190~200箇所の候補遺伝子の一塩基多型が抽出された。また、解析対象疾患について、illumina社のBeadChip (Human Onmi2.5-8) を用い、ゲノムワイドなSNP情報を収集した。 次年度以降は、症例解析と共に、難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業と連携し、合併症を伴わない正期産のデータのゲノムワイドなSNP情報取得を進める。妊娠維持・胎児発育に適したコントロール症例(リファレンス)のデータベースを構築し、それらのリファレンスデータが、産科領域の難治性疾患や稀少疾患の関連遺伝子の絞り込みに有用であるか、検証する。またマウスなどのモデル動物で報告されているmaternal-effect genesとの比較を行い、産科領域の難治性疾患や稀少疾患の関連遺伝子を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画では、母体の遺伝的要因の関与が推測され、生児を得ることが困難な症例、胎児の発育異常を繰り返す症例など、現状での治療では生児を得ることができない不育症を本研究の解析対象とし、遺伝子解析に同意した数症例について、母体末梢血液及び臍帯血・胎盤組織からgDNA を抽出した。平成24年度計画していたエクソン解析、網羅的SNAP解析のデータの取得と一次解析を行った。 1.検体からのgDNA の抽出は、QIA symphony(自動化gDNA抽出ロボット)を用い、血液からgDNAを抽出した。胎盤組織は、QIA amp DNA mini kitを用い、gDNAを抽出した。 2.エクソン解析によるde novo変異同定には、約60 Mbの全エクソン配列を網羅したオリゴキャプチャーで、gDNAからエクソン領域を選択的に捕捉回収し、次世代シークエンサー(HiSeq)で網羅的に配列情報を取得した。配列情報のMapping、dbSNPとの異同比較、アミノ酸置換の評価を行い、候補遺伝子の絞り込みを試みた。 3.網羅的SNP解析を疾患症例について行った。具体的には、illumina社のBeadChip (Human Onmi2.5-8) を用い、ゲノムワイドなSNP情報を収集した。収集した多型情報に基づき、メーカー仕様のソフトKaryoStudioを活用し、コピー数異常(欠失、copy neutral loss of heterozygosity、重複)について解析を行った。 以上のように、平成24年度の進捗状況から、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降では、原因不明の産科領域の難治性疾患や稀少疾患に加えて、難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業と連携し、コントロールの症例(合併症のない正期産)のリファレンスデータの収集を進める。平成24年度では、エクソン解析による候補遺伝子の絞り込みの目的で、コントロール症例(リファレンス)には、1000人ゲノムプロジェクトの日本人データを利用し、SNPの頻度が0.02以上を候補遺伝子から除いたが、妊娠維持・胎児発育という観点から、よりよいコントロールとして、合併症を伴わない正期産のゲノムワイドなSNP情報取得を進め、データデータベースを構築する。それらのリファレンスデータが、産科領域の難治性疾患や稀少疾患の関連遺伝子の絞り込みに有用であるか、検証する。またマウスなどのモデル動物で報告されているmaternal-effect genesとの比較を行い、産科領域の難治性疾患や稀少疾患の関連遺伝子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の購入を計画していたSNPアレイ(Bead chip)は、他の研究費からの支出により購入できたため、アレイ購入に充てていた約80万円は、平成25年度以降に必要な消耗品の購入に充当する。平成25年度以降の研究経費の主要な用途は、消耗品である。研究の遂行にあたり、高額なSNPアレイ(Bead chip)、次世代シークエンス用のサンプル調整キット、核酸抽出試薬や、プライマー、酵素などのゲノム・エピゲノム解析に必要な試薬類の購入が必要である。また研究打ち合わせ、情報交換や研究成果の公表のための学会参加に必要な出張経費、および論文発表の際に必要な諸経費、研究協力者に係る人件費や謝金、データ解析など専門知識の提供に対する謝金を計上する。
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