研究課題/領域番号 |
24592496
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部) |
研究代表者 |
藤堂 幸治 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), その他部局等, その他 (90374389)
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研究分担者 |
櫻木 範明 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70153963)
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キーワード | 子宮体癌 / リンパ節微小転移 / 再発 / 予後 |
研究概要 |
中リスク子宮体癌におけるリンパ節微小転移の実態解明にあたり、一症例あたりの作業量が多いため対象の限定を行った。作業を北海道がんセンター病理部で行う必要があったため、施設を北海道がんセンターに限定し、更に中リスク群の中でも比較的リスクが高いと思われる「筋層浸潤1/2以上」の症例でなおかつ十分な観察期間を有する「1997-2004年に治療を行った」症例に限定した。 当該期間の子宮体癌は総数233例で、リンパ郭清術及びルーチンに行う摘出リンパ節の病理検査が実施された症例が173例。このうち「筋層浸潤1/2以上」であった症例が54例で、更にルーチンの病理検査で転移陰性と診断されていた症例は33例であった。 Ultrastagingは32例のケースシリーズに対して実施され、8例(25%)にリンパ節微小転移を認めた。リンパ節微小転移群はリンパ節転移陰性群と比較して傍大動脈リンパ節の再発が多い傾向(25% vs 0%, p=0.057)にあり、統計学的有意差を認めなかったものの、8年全生存率が約20%下回っていた。(Kaplan-Meier法:66.7% VS. 86.8%、log-rank test:p=0.21) 我々は子宮体癌のリンパ節微小転移症例には現時点で傍大動脈領域の局所治療を考慮すべきと結論した。 乳癌領域では「術後追加治療を実施しない/しなかった」リンパ節微小転移を予後不良因子と認めている。子宮体癌におけるリンパ節微小転移の意義について言及した報告はほとんどなく、また具体的治療方針に言及した報告はないと言ってよい。本研究は症例数が少ないためリンパ節微小転移の予後への影響を解明することはできなかったが、引き続きその意義を追及することの重要性を示した。すでに論文作成および英文校正が完了しており、投稿の準備が整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載したように症例あたりにかかる費用が10-18万円であり、このため2年間で20-30例の検討ができればと考えていた。当初計画において検討症例におけるリンパ節微小転移率は15-30%を期待していた。これを下回った場合、症例あたりに作成する標本数を増やす考えであった。しかしこれは同時に予算の拡大を意味するため極力避けたい点であった。 現在までに32例の検討が終了したこと、検討症例におけるリンパ節微小転移率は25%であった点は研究の順調な進展と評価できる。 更にこの少ない検討数でリンパ節微小転移群とリンパ節転移陰性群の間に再発様式の差を示すに至った点においても順調な進展と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最大の関心事はリンパ節微小転移が予後に与える影響を解明することである。 現在までの検討でリンパ節微小転移群はリンパ節転移陰性群と比較して統計学的有意差を認めなかったものの、8年全生存率が約20%下回っていた。(Kaplan-Meier法:66.7% VS. 86.8%、log-rank test:p=0.21) 本結果は症例数の増加により統計学的有意差を証明できる可能性を示唆している。 またこれまでの検討は中リスク群の中でも「筋層浸潤1/2以上」の症例に対象を限定して行ったものである。我々は更に「筋層浸潤1/2未満であるが組織学的分化度が悪い」症例に対象を拡大しようと考えている。 今後の研究推進方策は(1)「筋層浸潤1/2以上」の症例数を増加して検討を行うことと、(2)「筋層浸潤1/2未満であるものの組織学的分化度が悪い」症例に限定してプレリミナリーな検討を行うことである。
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次年度の研究費の使用計画 |
Ultrastagingに関する一症例あたりにかかる物品費を増やす目的で学会発表を抑えた結果次年度使用額が若干余剰となりました。 これまでに行われたUltrastagingは32例ですが、次年度は20例の検討を予定しております。これは予定研究全体の40%を占める仕事量でその分、物品費が予定以上に必要となります。次年度使用額約13万円はすべて物品費として使用する予定です。
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