研究実績の概要 |
in vitroの研究や動物実験では、メトホルミンががん細胞の増殖に直接作用して抑制効果を示すことが確認されてきた。しかし、これらの実験で用いられたメトホルミンの濃度は、臨床使用時の血中濃度の50-100倍近くと高濃度であり、実際にメトホルミンを生体に投与した場合の血中濃度でがん細胞増殖抑制効果が認められるのかどうか疑問視されている。 これまで、我々は、メトホルミン投与時の子宮内膜組織内濃度、血中濃度を測定し、in vitroで増殖抑制効果の得られる濃度の1/400で有ることを確認した。子宮体癌患者に臨床投与量のメトホルミンを服用し、投与前後で増殖活性を比較したところ、投与後の組織でAMPK-mTORの抑制・ERKの抑制・細胞周期タンパク調節が確認された。また、免疫染色でKi-67, トポイソメラーゼIIαの発現低下、リン酸化ERK, リン酸化S6の発現低下を認め、細胞増殖活性の低下を確認した。 メトホルミン服用により、GF-1, レプチン、インスリンなどの血清因子が投与前に比較し有意に減少した。また、メトホルミン投与後の血清は細胞増殖活性の減弱を認めた。 メトホルミン投与は、生体内では直接作用ではなく、メトホルミンによる関節的な効果で細胞増殖が抑制されることが示された。このメトホルミンの効果はインスリン抵抗性、肥満患者に著明に認め、肥満女性増殖抑制効果が期待できる。脂肪細胞との共培養により、子宮内膜癌培養細胞の増殖が亢進することが確認され、メトホルミンは脂肪細胞との相互作用で増殖を抑制する可能性がある。今後肥満者におけるメトホルミンの子宮内膜への影響を検討する臨床試験を開始する。
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