研究課題/領域番号 |
24592508
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 充宏 金沢大学, 大学病院, 助教 (50377397)
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研究分担者 |
京 哲 金沢大学, 医学系, 准教授 (50272969)
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キーワード | 癌幹細胞 / 子宮内膜癌 / 血管新生 |
研究概要 |
本年度は子宮内膜癌幹細胞の血管へ分化するメカニズムについて検討を行った。 患者の同意を得た上で採取された子宮内膜癌組織から樹立した2種類の細胞株(Case 5細胞及びCase 6細胞)と正常子宮内膜上皮細胞にヒトパピローマウイルス(HPV)のOncogeneであるE6/E7、テロメレースの触媒サブユニットであるhTERT及びK-RAS遺伝子を導入し樹立した子宮内膜癌細胞(E6/E7/hTERT/KRAS細胞)、そして子宮内膜癌細胞株2種類 (Ishikawa及び MFE280)の計5種類について検討を行った。 フローサイトメトリーにて癌幹細胞マーカーであCD133の発現を調べたところ、5種類すべてにCD133の発現が認められた。これらの細胞をCD133陽性、陰性細胞に分離しIn vitro endothelial tube formation assayにて血管内皮細胞への分化について検討を行った。MFE280以外の4種類の細胞においてCD133陽性細胞が血管様構造を構築したのに対し、陰性細胞では認められなかった。MFE280はCD133陽性、陰性共に血管様構造を構築しなかった。これら4種類の細胞を低酸素下にて培養したところ2種類(Case 6細胞及びE6/E7/hTERT/KRAS細胞) の細胞で血管内皮細胞マーカーであるCD31の発現が増加した。これら2種類の細胞をCD133陽性、陰性細胞に分離し各々低酸素の有無の下In vitro endothelial tube formation assayを施行したところ低酸素下でのCD133陽性細胞に血管様構造の促進、維持が認められた。 癌幹細胞が血管内皮細胞への分化に関与している可能性が示唆された。またその分化に低酸素が寄与していることも明らかとなった。改めて癌幹細胞をターゲットとした治療法の開発が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、臨床検体を用いた実験により、癌細胞が血管に分化する可能性を示唆した結果を得た。この知見を基に癌幹細胞がその役割に重要ではないかと着目し、昨年度から今年度にかけて癌幹細胞が血管への分化に関与していることを突き止めるべく実験を行った。予想通り癌幹細胞が血管への分化に関与し低酸素環境も重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は癌幹細胞をターゲットとした分子標的治療法の確立を目指す。癌幹細胞及び癌幹細胞から分化した新生血管を分子生物学的に解析し、ターゲット候補となる分子を検索する。得られた結果を基にこれらを特異的に阻害することで、腫瘍の抑制効果があるか検証する。また現在血管新生を阻害する分子標的薬が存在するが、これらが癌幹細胞が分化した新生血管に有用であるかどうかについても検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験が順調に実行され結果も概ね予想通りであったため、確認実験の回数が当初予定していたものより少なく済んだたため、使用額が当初より少なくなった。 子宮内膜癌における癌幹細胞をターゲットとした分子標的治療法の確立を目指すため、マウスを用いた動物実験に使用する予定である。
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