研究課題/領域番号 |
24592509
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
吉田 好雄 福井大学, 医学部, 教授 (60220688)
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研究分担者 |
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
黒川 哲司 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (60334835)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 子宮肉腫 / PET / エストロゲン受容体 |
研究概要 |
【背景と目的】子宮肉腫は女性骨盤腫瘍の中で1%程度を占めるに過ぎない稀な疾患であるが、筋腫との鑑別が困難であることから、診断された際には進行しており予後不良の原因となることが多い。子宮腫瘍の良悪性鑑別のため、[F-18]fluoroestradiol (FES)によるPETが有用であることを報告してきたが、筋腫・肉腫の鑑別にもエストロゲン受容体(ER)密度の評価が重要であるかを検討した。 【方法】婦人科内診、US、MRI等の検査により、子宮肉腫の疑いと診断された47人の患者に、[F-18]fluorodeoxyglucose (FDG)およびFESによるPET検査を行った。2種類のPET検査は1週間以内の間隔で施行され、MRI検査も施行された。PET検査終了後、子宮摘出術が施行され、病理組織学的診断により最終診断とした。組織標本ではさらに、ERalpha;, ERbeta;, プロゲステロン受容体(PR), グルコーストランスポーター(GLUT1), Ki67等の免疫組織学的解析も加え、PET薬剤集積と免疫組織染色スコアの相関を検討した。 【結果】対象とした47人の患者のうち、33人は子宮筋腫、14人が子宮肉腫であった。FES集積は筋腫群で有意に高く、FDG集積は肉腫群で有意に高値であった。各腫瘍でFDG/FES比を算出すると、肉腫群で有意な高値を認めた。免疫組織染色スコアとの相関では、FES集積はERalpha;、PRと有意な相関を示したが、ERbeta;とは相関しなかった。FDG集積はGLUT1, Ki67との相関を示した。FDG/FES比はERalpha;、PRと逆相関を示し、GLUT1, Ki67とは正の相関であった。 【結論】FES集積はERalpha;発現を反映し、肉腫の特徴であるERalpha;発現の低下を描出することで、良悪性の鑑別に有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別においてFES集積は筋腫群で有意に高く、FDG集積は肉腫群で有意に高値であり、各腫瘍でFDG/FES比を算出すると、肉腫群で有意な高値を認めた。免疫組織染色スコアとの相関では、FES集積はERalpha;、PRと有意な相関を示したが、ERbeta;とは相関しなかった。FDG集積はGLUT1, Ki67との相関を示した。FDG/FES比はERalpha;、PRと逆相関を示し、GLUT1, Ki67とは正の相関であった。FES集積はERalpha;発現を反映し、肉腫の特徴であるERalpha;発現の低下を描出することで、良悪性の鑑別に有用であることが示された。 以上のことが免疫組織学的検査とPETを用いた分子イメージング法の研究で判明した。この検討結果は従来あまり予後あるいは治療法選択関係がないと思われた子宮肉腫におけるエストロゲン受容体の発言の役割が判明した。これらをもとに今後新たな治療法を模索する また本研究成果は18F-FES and 18F-FDG PET for Differential Diagnosis and Quantitative Evaluation of Mesenchymal Uterine Tumors: Correlation with Immunohistochemical Analysis.Zhao Z, Yoshida Y, Kurokawa T, Kiyono Y, Mori T, Okazawa H.J Nucl Med. 2013 Apr;54(4):499-506. doi: 10.2967/jnumed.112.113472. Epub 2013 Mar 7. に論文発表した
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今後の研究の推進方策 |
FDG集積率/FES集積率が、生体内のどのような生物学的特性を反映するかを、腫瘍内低酸素環境の観点から、明かにする。 腫瘍内酸素モニターシステム(Eppendorf pO2 sensor)を使用したdataから 腫瘍内酸素濃度の検討を実施する。 各々の腫瘍の腫瘍内酸素濃度環境下、低酸素化因子の発現と、ERからの生存シグナルの発現を、免疫組織学的に検討する。 術前にFDG/FES低下群、中等度群、高度群の3郡に分類された腫瘍内の、組織を採取し、組織を凍結切片する。 凍結切片内における放射能集積の経時的変化を測定、腫瘍内のFDG, FESの集積能を、double labeling し、radioreceptor assay法で検討し、実際の撮像された像と各腫瘍から採取した切片組織の相同性を検討したのち、同部分の組識をhomoginatingし、DNA array(サブトラクションスクリーニング法)で新規遺伝子を模索し、組織array法を用いて、FES/FDGの取り込み能の差が、どの遺伝子発現に相関しているかを検討する。そして、これらの知見を生かし、新たな治療法開発に用いる。 特に、子宮筋腫と子宮肉腫低酸素環境下での、ERからの生存シグナルと、低酸素化因子の何らかの相関関係があるかどうかを検討し、サブトラクションスクリーニング法などを用いて、あらたな、子宮肉腫の病態解明をになう遺伝子 あるいは タンパク質の同定を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の目的は、生体機能検査の代表であるPET (positron emission tomography)(FDG,FES)を用いて、生体内で機能している、エストロゲンレセプターの発現や、糖代謝能の発現を検討し、子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別診断法の確立と、それらの病態生理に基づいた治療法を確立することである。 従って、EstrogenにF-18を添加した、F-18-Estradiol注射液(FES)トレーサーの作成と、fluorodeoxyglucoseにF-18を添加したF-18-fluorodeoxyglucose (FDG)トレーサーの作成が必要である。 さらに、子宮腫瘍における、FES集積率は、子宮腫瘍の何の生物学的特性を反映するかを明かにするため、免疫組織学的手法を用いてERalpha PR-A B, Ki-67, cycline D1,mTOR,p-ERの発現と相関関係があるかどうかを検討するため、各種抗体が必要である。また同時に、子宮腫瘍のFDG集積の機序を明かにするため、Glut-1, HIF-1,2 p53, Ki-67, VEGF, CD34(angiogenesis),mTORの発現と相関関係があるかどうかを検討するため、各種抗体が必要である。 同時にホルモン値を 測定するため各種キットが必要である。 FDG集積率/FES集積率が、生体内のどのような生物学的特性を反映するかを、腫瘍内低酸素環境の観点から明かにするため、腫瘍内酸素モニターシステム(Eppendorf pO2 sensor)を使用するため、Eppendorf pO2 sensorの各種消耗品が必要である。組織間の遺伝子発現を 組織array法を用いて行うため、arrayのキットが必要である
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