研究実績の概要 |
【背景と目的】我々はこれまで、子宮腫瘍の良悪性鑑別のため、[F-18]fluoroestradiol (FES)によるPETが有用であることを報告してきたが、筋腫・肉腫の鑑別にもエストロゲン受容体(ER)密度の評価が重要であるかを検討した。さらに、低酸素に関与している蛋白発現を検討した。 【方法】子宮肉腫の疑いと診断された47人の患者を対象に、FDGおよびFESによるPET検査を行った。2種類のPET検査は1週間以内の間隔で施行され、事前にMRI検査も施行された。PET検査終了後、子宮摘出術が施行され、病理組織学的診断により最終診断とした。組織標本ではさらに、ERa, ERb, プロゲステロン受容体(PR), グルコーストランスポーター(GLUT1), Ki67等の免疫組織学的解析も加え、PET薬剤集積と免疫組織染色スコアの相関を検討した。症例数は25例新たに検討した。 【結果】対象とした47人の患者のうち、33人は子宮筋腫、14人が子宮肉腫であった。FES集積は筋腫群で有意に高く、FDG集積は肉腫群で有意に高値であった。各腫瘍でFDG/FES比を算出すると、肉腫群で有意な高値を認めた。免疫組織染色スコアとの相関では、FES集積はERa、PRと有意な相関を示したが、ERbとは相関しなかった。FDG集積はGLUT1, Ki67との相関を示した。FDG/FES比はERa、PRと逆相関を示し、GLUT1, Ki67とは正の相関であった。症例数は25例新たに検討し 肉腫症例は5例増加した。いずれも術前に肉腫を強く疑い手術することが可能であった。 【結論】FES集積はERa発現を反映し、肉腫の特徴であるERa発現の低下を描出することで、良悪性の鑑別に有用であることが示された。さらに低酸素マーカーの1つであるGlut-1の発現機序も、肉腫には重要であることが判明した。
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