研究課題/領域番号 |
24592510
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 琢磨 信州大学, 医学部, 准教授 (60359726)
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キーワード | LMP2 / 子宮平滑筋肉腫 / 子宮間葉系腫瘍 |
研究概要 |
生体内で発生した腫瘍細胞は、①p53を中心とした生体防御因子による老化からアポトーシスへの道程、②遺伝子変異を起因とした癌関連因子の活性化による悪性化への道程、いずれかの運命を進むことになる。子宮平滑筋肉腫(子宮肉腫)は、再発・転移を繰り返す難治性腫瘍である。人種を問わず成人女性のほぼ全員に発症する子宮平滑筋腫(子宮筋腫)は良性腫瘍であるが、子宮肉腫との判別が極めて難しい場合もある。画像診断技術は日々進歩しているが、MRI等の画像診断では、子宮肉腫は子宮筋腫と区別しにくい場合もある。現行の確定診断は、病理医の経験に基づいた摘出物の病理診断により行われるため客観性に欠けている。そのため、容易で正確に診断できる技術と治療法の確立が要望されている。 これまで、私達は、プロテアソーム構成因子LMP2の欠損マウスで、子宮肉腫が高頻度に自然発症することを報告した(利根川 進 教授米国・MITの研究協力)。そこで、私達は、病理ファイルより選別された各生検組織でのLMP2の発現状況について免疫組織化学染色により検討した。その結果、子宮肉腫で特異的にLMP2の発現が著しく減弱することが明らかとされた。そこで、私達は、LMP2に着目したDNA MicroArrayの遺伝子プロファイリングを行い、子宮肉腫特異的にCyclin Eの著しい発現が認められた。提携の医療機関との連携の基、私達は、LMP2とCyclin E、Calponin h1の3種類の因子を子宮間葉系腫瘍の診断マーカーとして検証している。さらに、この遺伝子プロファイリングの結果を基に分子生物学と病理組織学的解析を行ったところ、LMP2は、子宮肉腫細胞に対して老化・アポトーシスへの誘導因子として働いている可能性が見いだされた。つまり、私達は、子宮平滑筋腫瘍において、LMP2がp53と似通った役割を担っている可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私達は、LMP2に着目したDNA MicroArrayの遺伝子プロファイリングを行い、子宮肉腫特異的にCyclin Eの著しい発現が認められた。提携の医療機関との連携の基、私達は、LMP2とCyclin E、Calponin h1の3種類の因子を子宮間葉系腫瘍の診断マーカーとして検証している。さらに、この遺伝子プロファイリングの結果を基に分子生物学と病理組織学的解析を行ったところ、LMP2は、子宮肉腫細胞に対して老化・アポトーシスへの誘導因子として働いている可能性が見いだされた。つまり、私達は、子宮平滑筋腫瘍において、LMP2がp53と似通った役割を担っている可能性を示し、本研究成果を2012年から2014年までの間に論文34報に報告した。このように研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
私達は、遺伝子プロファイリングの結果を基に分子生物学と病理組織学的解析を行ったところ、LMP2が子宮肉腫細胞に対して老化・アポトーシスへの誘導因子として働いている可能性を見いだした。今後、私達は、子宮平滑筋腫瘍において、LMP2が消化器系癌細胞のキーパーソンであるp53と似通った役割を担っている可能性について、分子生物学と病理組織学的解析によってさら詳細に検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。海外での学会発表について、近隣国と日本との関係が好ましくない状況があったため、中国や韓国で開催された学会への参加を控えた。その結果、次年度使用額が生じた。 来年度26年度は、新たなサンプルを用いて遺伝子プロファイリングをおこなう予定で、子宮平滑筋肉腫及び子宮筋腫の発症にリンクする因子の同定を試み、同疾患に対する標的因子の解析も行う。海外での学会発表について、平成26年度は、世界情勢を考慮の上、中国や韓国で開催される学会への参加も行いたい。
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