研究課題/領域番号 |
24592513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
工藤 基 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80108141)
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研究分担者 |
宇田川 潤 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10284027)
松田 和郎 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (80444446)
瀧 公介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20359772)
本間 智 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40285581)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 耳鳴り / 聴覚系 / 下丘 / 中脳網様体 / 視蓋前域 |
研究概要 |
中枢性聴覚障害の発症機序として脳幹レベルの異常が深く関わっている。本研究では下丘を中心とした抑制系神経回路システムをまず解析した。この実験では神経トレーサーとGABAやVGlueT2等の免疫組織学的実験を行った。さらに感情脳の関与が大きいことに鑑みて扁桃体や側坐核におけるセロトニンとドーパミンの終末分布の変化を免疫組織学的にとらえようとした。耳鳴りモデルマウスはサリチル酸ナトリウムの投与によって作製した。今までに、我々は聴覚上行路に主経路と副経路の2つのシステムがあることを明らかにしてきたが、耳鳴りなどの聴覚異常は副経路が関わっていることを明らかにしている。平成24年度に行った研究では以下のことがわかった。1)下丘外側核―視蓋前域・中脳網様体投射ニューロンは、聴覚副経路に属すが、GABA作動性ニューロンが下丘外側核腹側部に集中して存在する。2)扁桃体や側坐核でセロトニンとドーパミンの終末分布を免疫組織学的に行った。耳鳴りモデルラットと正常ラットの間に大きな変化は観察されなかった。3)下丘におけるc-fosを発現様式が耳鳴りモデルラットと正常ラットで異なっていた。今後の研究の進展が期待される結果である。さらにいくつかの新知見を得て研究の前進をみることができた。同時に聴覚路の持つ独特の複雑さも浮き彫りとなったので今後とも継続してこの課題に取り組んでゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耳鳴りには感情脳の関与が大きいことに鑑みて扁桃体や側坐核におけるセロトニンとドーパミンの終末分布の変化が起こる事を当初は想定していた。実験してみると大きな変化は現れなかった。しかし耳鳴りなどの聴覚異常は副経路が関わっていることを、下丘におけるc-fosを発現様式が耳鳴りモデルラットと正常ラットで大きく異なっていることで再確認できた。下丘外側核―視蓋前域・中脳網様体投射ニューロンは、聴覚副経路に属すが、GABA作動性ニューロンが下丘外側核腹側部に集中して存在することを新たに見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
1)下丘―視蓋前域・中脳網様体投射ニューロンを神経トレーサーで同定する。2)GABA抗体を用いて下丘を含む聴覚脳幹を免疫染色する。3)c-fos抗体を用いて下丘を含む聴覚脳幹を免疫染色する。サリチル酸ナトリウムを用いて耳鳴りモデルラットを作製し、上記の実験系を組み合わせてデーターを得る。当初は予期しなかった研究成果がマクロ解剖的手法で得られた。すなわち閉経モデルラットの作製に卵巣摘出を行う必要があることから、骨盤内外科手術のリスクを検証する中で子宮動脈塞栓術について解剖学的研究もあわせておこなった結果、内腸骨動脈が動脈輪を形成している変異例を見いだした。これは骨盤内外科手術のリスク要因と考えられた。このようにマクロ解剖所見から思いがけない成果が得られたことに鑑みて実験方法の多様化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)免疫組織化学、2)神経トレーサー実験、3)データー解析、特に画像解析、4)学会発表と論文執筆公表
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