研究課題/領域番号 |
24592513
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
工藤 基 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80108141)
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研究分担者 |
宇田川 潤 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10284027)
松田 和郎 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (80444446)
瀧 公介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20359772)
本間 智 金沢医科大学, 医学部, 教授(Professor) (40285581)
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キーワード | 下丘 / 聴覚系 / 耳鳴り / マクロ解剖学 / 超音波 |
研究概要 |
「耳鳴り」の発症には、聴覚神経路の全てが関与している。本研究では下丘を中心とした脳幹部の抑制系神経回路の役割をまず解析した。この実験では蛍光神経トレーサーとGABA抗体やVGlueT2抗体等を用いた免疫組織化学を組み合わせた。さらに感情脳の関与が大きいことに鑑みて扁桃体や側坐核におけるセロトニンとドーパミンの終末分布の変化を免疫組織学的にとらえようとした。耳鳴りモデルマウスはサリチル酸ナトリウムの投与によって作製した。 我々は聴覚上行路に主経路と副経路の2つのシステムがあることを明らかにしてきた。このうち、耳鳴りなどの聴覚異常には副経路が主に関与していることを明らかにした。本研究では更年期障害動物モデルを考慮する中で、卵巣摘出を行う際の骨盤内外科手術のリスクを検証し、子宮動脈塞栓術について解剖学的研究もあわせておこなった。平成25年度までに以下の点が明らかになった。 1)下丘外側核―視蓋前域・中脳網様体投射ニューロンは、聴覚副経路に属すが、GABA作動性ニューロンが下丘外側核腹側部に集中して存在する。2)耳鳴りモデルラットでセロトニンとドーパミンの終末分布を扁桃体や側坐核で免疫組織学的に観察したが大きな変化はなかった。3)下丘先端部(rostral pole)は独立した機能モジュールである。このことが耳鳴りとどのように関わるか今後の研究の進展に期待される点である。4)マクロ解剖所見から内腸骨動脈が動脈輪を形成している変異例を見いだした。これは骨盤内外科手術のリスク要因と考えられた。5)超音波イメージングの新しい手法を開発した。臨床応用が期待される。 いくつかの新知見を得て研究の前進をみることができた。同時に聴覚路の持つ独特の複雑さも浮き彫りとなったので今後とも継続してこの課題に取り組んでゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耳鳴りは下丘や大脳皮質を含む聴覚中枢全てが関わっている。研究を進めると、下丘や聴覚皮質の正常構造に未解明の事項が多く存在することが明らかとなった。下丘先端部(Rostral Pole)は独立した機能単位であることを新たに見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
耳鳴りは難聴者や高齢者に多く難治性である。末梢の聴器だけではなく脳全体が関与する症候と考えられるようになった。一説では、幻覚痛(手足の痛みなど痛みが起こっているはず部分を喪失した人でも感じる痛み)のように現実にあり得ない音を脳が勝手に作り出してしまう現象と考えられる。だから幻覚痛にならって幻覚聴と言えるかもしれない。これは聴覚路のどの部位の障害でも起こりうるので、正常な聴覚生理学を押し進めることがそのまま耳鳴り解明に資するはずである。今後の研究は:1)下丘とその周辺核群の神経発生。2)ヒト脳のへシュル回のマクロ解剖学的研究。の2点に絞って行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費と物品費の効率的使用を考慮したため。 旅費と物品費の効率的使用を行う。
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