研究課題
我々は、低酸素状態で分泌される血管新生因子PlGF (Placental Growth Factor) や VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)に着目し、それらが卵巣癌の播種病変の形成に与える影響や癌患者の予後に与える影響を検討した。具体的には、VEGF の発現を制御する因子として上流の NF-κB(nuclear factor-kappa B)シグナルに着目して検討を行った。本研究ではまず94例の卵巣癌組織検体より作成した組織アレイを NF-κBの上流シグナルであるリン酸化 IKK(p-IKK)抗体およびVEGF で染色し、NF-κB シグナルが卵巣癌の予後に与える影響とIKKのリン酸化とVEGF の発現との関連性を検討した。患者の予後は Kaplan-Meier 法を用いて解析し、卵巣癌組織におけるIKK のリン酸化が独立した予後因子であることを見出た。さらにIKKのリン酸化とVEGF の発現との正の相関関係があることを証明した。即ち、NF-κBシグナルの活性化がVEGF の発現を制御することにより、卵巣癌患者の予後を規定している可能性を示唆することができた。そこで特異的な IKKβ阻害剤であるIMD-0354 を分子医薬研究所(株)より提供を受け、卵巣癌細胞に与える影響を検討した。IMD-0354は卵巣癌細胞におけるNF-κBシグナルの活性化を抑制することにより VEGF の産生を濃度依存的に抑制した。IMD-0354はまた低濃度で卵巣癌の浸潤能、接着能を有意に抑制した。さらに卵巣癌腹膜播種モデルマウスにおいても、IMD-0354 投与が実験動物における腹膜播種を有意に抑制した。以上、NF-κBシグナル抑制が癌細胞よりのVEGF 作成を抑制することを証明し、新規IKKβ阻害剤が新たな抗血管新生治療薬になりうる可能性を報告した。
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Mol Cancer Ther
巻: 14 ページ: 909-19
10.1158/1535-7163.MCT-14-0696
Oncotarget
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