研究課題/領域番号 |
24592517
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
板持 広明 鳥取大学, 医学部, 講師 (20314601)
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研究分担者 |
紀川 純三 鳥取大学, 医学部附属病院, 教授 (00177784)
佐藤 慎也 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (10423261)
佐藤 誠也 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (30621007)
原田 省 鳥取大学, 医学部, 教授 (40218649)
島田 宗昭 鳥取大学, 医学部, 助教 (40362892)
千酌 潤 鳥取大学, 医学部, 助教 (70467702)
大石 徹郎 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (80359877)
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キーワード | 卵巣明細胞腺癌 / FGFR2 |
研究概要 |
卵巣明細胞腺癌112例から手術時に得られた組織検体を用いた。免疫組織化学にてFGFR2やその下流のシグナル伝達経路の蛋白発現を検討した結果、腫瘍組織中のFGFR2蛋白発現は96%の症例で観察された。一方、ARID1Aは39%の症例で欠失していた。FGFR2およびARID1A蛋白染色強度と進行期ならびにPI3K/Akt/mTOR経路の蛋白染色強度との間に関連はみられなかった。また、累積5年生存率はFGFR2蛋白の中および高発現群では54%であり、無および低発現群の79%に比して有意に低かった。多変量解析の結果、FGFR2蛋白染色強度は進行期とともに独立予後因子であった。一方、ARID1AおよびPI3K/Akt/mTOR経路の蛋白染色強度と患者の予後との間に関連はみられなかった。新鮮凍結組織検体が得られた13例では、FISHによりFGFR2遺伝子発現を検索した。その結果、すべての症例で2倍以上の遺伝子発現増幅がみられた。 基礎的検討では、FGFR2蛋白は明細胞腺癌由来細胞株11株中8株に強発現していた。明細胞腺癌株に対するFGFR阻害剤であるPD173074のIC50は、FGFR2強発現株で低発現株に比して低い傾向がみられた。また、FGFR阻害剤添加によりpAKTおよびpERK蛋白発現が抑制されるとともに、細胞周期のG1期停止が観察された。 FGFR2蛋白が予後予測マーカーとなり得ることを突き止めた。さらに、FGFR2制御による新たな治療法開発の可能性を示した。以上の成績から、難治性卵巣癌の一つである明細胞腺癌においてFGFR2は重要なバイオマーカーであり、FGFR2関連経路を標的とした新規治療戦 略による予後改善が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床的検討から、明細胞腺癌ではその96%にFGFR2蛋白発現が観察されるとともに、FGFR2蛋白発現強度がバイオマーカーとなり得ることを突き止めた。さらに、基礎的検討では、FGFR2制御による新たな治療法開発の可能性を示した。 しかしながら、施行予定であったFGFR2シグナル伝達経路制御による抗がん剤感受性の変化とその機序の解明が現在も実施中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
施行予定であったFGFR2シグナル伝達経路制御による抗がん剤感受性の変化とその機序の解明を今年度も引き続き施行する。また、ヌードマウスを用いたモデル実験を行い、明細胞腺癌に対するFGFR2シグナル伝達経路制御と抗がん剤との併用効果を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
施行予定であった実験計画がやや遅れており、次年度に実験を追加する。そのため、次年度に追加で物品を購入する必要が生じた。 FGFR2シグナル伝達経路制御による抗がん剤感受性の変化とその機序の解明を施行するために、siRNAやFlow Cytometry等に必要な物品を購入する。 また、モデル実験を行うために、ヌードマウスや抗がん剤等の必要物品を購入する。
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