研究課題
卵巣明細胞腺癌112例から手術時に得られた組織検体を用い、免疫組織化学にてFGFR2やその下流のシグナル伝達経路およびARID1A蛋白発現を検討した。その結果、腫瘍組織中のFGFR2蛋白発現は96%の症例で観察されたものの、ARID1A蛋白は39%の症例で欠失していた。これらの蛋白染色強度と進行期ならびにPI3K/Akt/mTOR経路の蛋白染色強度との間に関連はみられなかった。また、累積5年生存率はFGFR2蛋白の中および高発現群では54%であり、無および低発現群の79%に比して有意に低かった。多変量解析の結果、FGFR2蛋白発現強度は進行期とともに独立予後因子であった。一方、I/II期症例ではARID1A蛋白欠失例の累積5年生存率は74%であり、陽性例の91%に比して有意に低かった。多変量解析の結果、ARID1A蛋白発現の有無は臨床進行期とともに独立予後因子であった。新鮮凍結組織検体が得られた13例では、FISHによりFGFR2遺伝子発現を検索した。その結果、すべての症例で2倍以上の遺伝子発現増幅がみられた。基礎的検討では、FGFR2蛋白は明細胞腺癌由来細胞株11株中8株に強発現していた。明細胞腺癌株に対するFGFR阻害剤であるPD173074のIC50は、FGFR2強発現株で低発現株に比して有意に低かった。また、FGFR阻害剤添加によりpAktおよびpERK蛋白発現が抑制されるとともに、細胞周期のG1期停止が観察された。FGFR2およびARID1A蛋白発現が予後予測マ-カ-となり得ることを突き止めた。さらに、FGFR2制御による新たな治療法開発の可能性を示した。以上の成績から、難治性の卵巣明細胞腺癌においてFGFR2とARID1Aは重要なバイオマーカーであり、FGFR2経路を標的とした新規治療戦略による予後改善が期待される。
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Int J Clin Oncol
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