研究課題
近年、プロテオミクス解析の結果、NAC1の下流制御因子としてFASN(Fatty acid synthase:脂肪酸合成酵素)が報告された。FASNは以前から、各種癌で過剰発現が報告されており、治療標的の一つと考えられている。NAC1タンパク質発現は漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌に比べて明細胞腺癌で最も高頻度であった。NAC1の遺伝子増幅は高悪性度漿液性腺癌では21%であったが、明細胞腺癌では0%であった(p<0.01)。すなわち、NAC1の遺伝子増幅はHG漿液性腺癌特有のものと考えられた。NAC1タンパク質とFASNタンパク質発現は明細胞腺癌の臨床検体、細胞株のいずれにおいても正の相関を認めた。NAC1高発現、あるいはFASN高発現の明細胞腺癌患者は、PFS、OSともに有意に予後不良であった(p<0.05)。明細胞腺癌細胞株において、siRNAでNAC1遺伝子発現を抑制すると、FASN遺伝子発現も抑制された。逆にNAC1発現の低い細胞株にNAC1を安定遺伝子導入すると、FASN遺伝子発現レベルの上昇が認められた。明細胞腺癌細胞株にFASN阻害剤であるC75を投与すると、NAC1/FASN経路の存在するものが有意に細胞増殖が抑制された。以上の結果からNAC1/FASN経路の過剰発現が卵巣明細胞腺癌の増殖や生存に関与することが示唆され、NAC1/FASN経路を標的とした卵巣明細胞腺癌の治療の可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
NAC1の新たな機能経路としてNAC1/FASNシグナルが同定された。
NAC1のDNA結合ドメインの解析を集中的に行う予定である。
平成25年度は実験がスムースに進行し、消耗品の支出が大分抑えられたため、次年度への繰り越し金が生じた。平成26年度はNAC1研究を他癌種へ応用展開させるため、消耗品費用に昨年度繰り越し金を充てる予定であり。
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