研究課題/領域番号 |
24592519
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園田 顕三 九州大学, 大学病院, 講師 (30294929)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | RCAS1 / リンパ球アポトーシス / 腫瘍間質組織 / 血管新生 / ectodomain shedding / 悪性腫瘍 / 治療標的分子 / RNA干渉 |
研究概要 |
RCAS1は15種類の悪性腫瘍の独立した予後因子で、免疫担当細胞にアポトーシスを誘導し腫瘍周囲間質組織に質的変化を惹起することで腫瘍進展に有利な環境を形成する。当該研究ではRCAS1をターゲットとした新たな癌分子標的治療を構築することを目的とした。平成24年度の研究成果は以下のとおりである。 1.RCAS1の発現調節に関する解析:複数の細胞株の2次元・3次元培養を行い、RCAS1タンパク発現の差異をWestern blotとflow cytometryにて比較した。有意な発現差を認める細胞株を用いてcomparative genomic hybridization arrayによる遺伝子発現の解析を行ったところ、RCAS1発現と相関する複数の分子が抽出された。現在はこれらの分子の発現パターンを細胞株および組織標本を使用して解析している。 2.RCAS1のectodomain shedding分泌機構に関する解析:RCAS1を発現かつ分泌するSiSo細胞株とRCAS1を発現するが分泌しないMCF-7細胞株をmicroarray法で比較したところ、RCAS1のshedding機構においてはADAM9が切断酵素として重要な役割を担っていることが確認された。細胞株でのADAM9発現を人為的に変調させることでRCAS1分泌能の変化が誘導されたが、RCAS1分泌能が高い腫瘍組織ではRCAS1とADAM9両分子の高発現が確認された。 3.RCAS1受容体の単離と細胞内シグナル伝達機構の解析:RCAS1が赤白血病由来K562細胞にアポトーシスを誘導することから、short hairpin RNAライブラリーを用いた受容体単離を行った。複数の候補遺伝子が同定されたため、今後の受容体単離を円滑に遂行する目的でRNA干渉により候補分子発現を低下させた細胞株クローンを樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究計画内で平成24年度に予定していた1.RCAS1の発現調節に関する解析ではRCAS1発現と相関する複数の分子が抽出され、2.RCAS1のectodomain shedding分泌機構に関する解析ではprotease候補分子の同定が進捗し、3.RCAS1受容体の単離と細胞内シグナル伝達機構の解析では受容体候補分子が複数抽出されたことから、これら3項目ともバランスよく進展していると判断する。最終目標である悪性腫瘍に対する新規分子標的治療の開発に必要な基礎データの収集については今後とも継続しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究はおおむね順調に進展したと評価する。今後は1.RCAS1の発現調節に関する解析ではRCAS1発現と相関する複数の分子を含む細胞内シグナル伝達系の解析を推進する。2.RCAS1のectodomain shedding分泌機構に関する解析ではprotease候補分子の同定が進捗したため、同定されたproteaseに対する阻害剤を用いてin vitroおよびin vivoの腫瘍細胞および間質細胞の形態変化、造腫瘍能変化の解析を行う。3.RCAS1受容体の単離と細胞内シグナル伝達機構の解析では受容体候補分子が複数抽出されたことから、さらに実験を進展させRCAS1受容体以降の細胞内シグナル伝達機構に関して、リン酸化タンパクの同定、他液性因子等のシグナル伝達機構とのクロストークを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究の最終目標である悪性腫瘍に対する新規分子標的治療の構築に帰結するよう、上記の研究推進方策に沿って研究費を適切に使用する。
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