研究課題/領域番号 |
24592519
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園田 顕三 九州大学, 大学病院, 講師 (30294929)
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キーワード | RCAS1 / リンパ球アポトーシス / 腫瘍間質組織 / 血管新生 / ectodomain shedding / 悪性腫瘍 / 治療標的分子 / RNA干渉 |
研究概要 |
(1)RCAS1の発現調節機構に関する解析: RCAS1発現パターンの異なる細胞株を用いて、種々の遺伝子およびタンパク発現の変化をmicroarray法およびcomparative genomic hybridization (CGH) array法を用いて解析し、RCAS1発現に関与する分子解析を行いました。その結果複数の分子を抽出し、臨床検体における発現と臨床病理因子との相関について解析を行いました。 (2)RCAS1の分泌機構の解析: RCAS1のectodomain shedding機構においてRCAS1を分泌させるproteaseを同定し、子宮頸癌および体癌症例から採取した臨床検体におけるRCAS1発現・分泌動態とprotease発現の相関解析を行いました。その結果、RCAS1のshedding機構においてはADAM9が切断酵素として重要な役割を担っていることが確認されたため、子宮頸癌および体癌各25例の末梢血RCAS1濃度および腫瘍組織でのRCAS1とprotease発現に関してELISAおよび免疫組織染色を用いて相関解析を行いました。子宮頸癌および体癌症例での末梢血RCAS1濃度と腫瘍組織でのRCAS1およびADAM9発現に有意な相関を認め、ADAM9はRCAS1のectodomain sheddingにおいて主要なproteaseであり、悪性腫瘍におけるRCAS1分子標的治療開発のターゲットとなり得ることが示唆されました。以上の研究成果は論文化し、現在投稿中です。 (3)RCAS1受容体の単離と細胞内シグナル伝達機構の解析: RCAS1はK562細胞にアポトーシスを誘導することから、K562細胞とshort hairpin RNA(shRNA)ライブラリーを使用してRCAS1受容体単離を試みました。複数の受容体候補分子を同定し、現在は候補分子に対する特異的siRNAの導入による発現の人為的変化がRCAS1によって誘導されるアポトーシスの質的変化に及ぼす影響について解析を行っています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究は(1)RCAS1の発現・分泌機構に関する研究、および(2)RCAS1受容体の単離と細胞内シグナル伝達機構の解析を基盤として、(3)RCAS1を標的とした治療の開発を行うことを目的としています。平成24および25年度では上記(1)・(2)に携わりました。その成果は「9.研究実績の概要」に記述しましたが、この成果を基盤として(3)RCAS1を標的とした治療の開発における実験システムを構築可能と考えます。このin vitroおよびin vivo実験システムを活用し、当該研究の最終目標である悪性腫瘍に対する新規分子標的治療の開発に必要な基礎データ収集を今後とも継続していきます。
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今後の研究の推進方策 |
(1)RCAS1の発現調節機構に関する解析: 本年度に施行したmicroarray法およびCGH array法によって抽出された分子特異的siRNAやcDNAの導入による発現の人為的変化がRCAS1発現やin vitro実験系での腫瘍細胞株の悪性形質変化に及ぼす影響について解析を行います。この研究をモデルとして特異的siRNAの効率良い組織デリバリーおよび発現システムの開発を行います。 (2)RCAS1の分泌機構の解析: 本年度の研究成果からADAM9はRCAS1のectodomain sheddingにおいて主要なproteaseであり、悪性腫瘍におけるRCAS1分子標的治療開発のターゲットとなり得ることが示唆されました。今後はRCAS1のsheddingに関与するproteaseおよび細胞内シグナル伝達系に対する阻害剤の有効性・有害性に関する評価をin vitroおよびin vivo実験系で施行する予定です。 (3)RCAS1受容体の単離と細胞内シグナル伝達機構の解析: 本年度施行したshRNAライブラリー実験により抽出された複数の受容体候補分子に対する特異的siRNA導入が惹起するアポトーシスの質的変化に関して現在解析を行っています。今後は単離されたRCAS1受容体以降の細胞内シグナル伝達機構に関して、リン酸化タンパクの同定、他液性因子等のシグナル伝達機構とのクロストークも解明する予定です。この実験系を用いてRCAS1の機能変調を誘導する新たな抗体の作製とRCAS1によって誘導される細胞内シグナル伝達系を阻害するsmall substance同定も遂行する予定です。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画に沿って研究を円滑に進捗させていましたが、時間を要する研究事項があり本年度研究費の一部を次年度に使用することとしました。 RCAS1は生物学的に重要な機能を有するユニークな分子です。これまでの研究成果を踏まえて、RCAS1の生物学的活性に関する基礎的解析を更に推進し、RCAS1をターゲットとした新たながん治療戦略の構築を行うことが本研究の最終目的です。目的を達成すべく、今後とも上記の研究推進方策に沿って研究費を適切に使用します。
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