研究課題/領域番号 |
24592520
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 裕明 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70260700)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カルポニンh1 / 卵巣がん / 腹膜播種 / アクチン |
研究概要 |
癌の浸潤や転移には、細胞の形態、接着、運動、増殖等を担う細胞骨格制御分子群が深く関与している。アクチン結合蛋白質カルポニンh1(CNh1)は細胞骨格アクチンを安定化させる働きをもつ。以前、我々はアデノウィルスベクターを用いてCNh1を卵巣癌細胞に導入し、癌細胞の増殖能と浸潤能が抑制されることを報告した。さらに卵巣癌腹膜播種モデルマウスに同ウィルスを腹腔内投与し、播種の抑制を介した延命効果を確認した。臨床に応用する場合、Cell-penetrating peptide(CPP)を用いた導入が有用であるが、CNh1の全長を組み込むことは困難である。そこでCNh1のタンパク質構造のうちアクチンの安定化に有効な最小部位のアミノ酸配列を同定することとした。 平成24年度行った実験内容:CNh1全長やCNh1の構造の一部をGFP標識して発現ベクターに組み込み、卵巣癌細胞株SKOV3i.p.-1とSHIN-3に導入した。免疫染色でアクチンの重合度合およびアクチンと外因性CNh1の局在を検討した。また細胞の運動能、浸潤能、増殖能に与える影響を検討した。 平成24年度行った実験結果:細胞質内のアクチン重合比率はCNh1全長で71.3%、カルポニンリピート構造だけ(以下、CNR)でも 41%とGFPのコントロール(6%)に比べて高率を示し、細胞形態にも変化を認めた。アクチンの重合部位に一致してGFPが局在していた。 得られた結果の意義:卵巣癌細胞においてCNRはCNh1全長と同様に機能し、アクチンの重合を促進しアクチンファイバーを生じさせた。CNRは標的治療の候補になりうると考えられ、これをCPPに導入し卵巣がん腹膜播種を治療する臨床試験への基礎が確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成24年度に予定した、細胞骨格アクチンを有効に安定化させるCNh1遺伝子の候補部分を同定できたことは研究の進捗にとっては大きい成果であった。現在、その部分ががん細胞の増殖能と浸潤能に対しても有効かを検証中であるが、良い結果が得られつつある。 以上、一部実験の方法に変更は持たせたが、平成24年度に予定した研究到達目標の8割ほどが順調に達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
CNh1遺伝子の候補部分(カルポニンリピート構造:CNR)が、がん細胞の増殖能と浸潤能に対しても有効かを確認できれば(すでに良好な途中実験結果を現在得ている)、担癌させたマウスで動物実験を行い、その有効性を確認したい。それが良好な結果であれば、臨床応用への道が開ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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