研究課題
癌の浸潤や転移には、細胞の形態、接着、運動、増殖等を担う細胞骨格制御分子群が深く関与している。アクチン結合蛋白質カルポニンh1(CNh1)は細胞骨格アクチンを安定化させる働きをもつ。以前、我々はアデノウィルスベクターを用いてCNh1を卵巣癌細胞に導入し、癌細胞の増殖能と浸潤能が抑制されることを報告した。さらに卵巣癌腹膜播種モデルマウスに同ウィルスを腹腔内投与し、播種の抑制を介した延命効果を確認した。臨床に応用する場合、Cell-penetrating peptide(CPP)を用いた導入が有用であるが、CNh1の全長を組み込むことは困難である。そこでCNh1のタンパク質構造のうちアクチンの安定化に有効な最小部位のアミノ酸配列を同定することとした。平成24-25年度に、CNh1の構造の一部であるカルポニンリピート構造部分(以下、CNR)を卵巣癌細胞株SKOV3i.p.-1とSHIN-3に導入し、免疫染色における細胞質内のアクチン重合促進とアクチンファイバー形成に伴う細胞形態変化、およびアクチンの重合部位に一致したCNR局在を確認した。CNR導入卵巣がん細胞の運動能と浸潤能は有意に抑制されたが、CNh1では抑制できていた増殖能は変化なかった。それを受けて平成26年度は、細胞増殖も抑制しうるアミノ酸配列を再度CNh1の全長から探索し直した。CNR1はCNR配列のさらに小部分の配列であるが、これを卵巣癌細胞に導入したところ良好なアクチン重合促進効果が確認できたため、卵巣がん細胞の運動能、浸潤能、増殖能に与える影響を検討した。CNRでは認めなかった細胞増殖に対する抑制効果が確認できた。以上より、CNR1は卵巣がんの分子標的治療の候補になりうると考えられ、これをCPPに導入し卵巣がん腹膜播種を治療する新規治療の可能性が示唆された。
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